普及が進まない日本の補聴器

難聴や加齢により聴力が低下してくると頭に思い浮かぶのが「補聴器」の利用です。

しかし、海外に比べて日本での補聴器の使用率は非常に低く、耳の聞こえの悪さに不自由している人がとても多いのが現状です。

価格が高いことや、購入のためのサポート体制が十分でないことが普及率低下に拍車をかけているのですが、難聴の方の生活の質を高めるためにも、もっと普及しなくてはいけないはずです。

今回は海外と日本の補聴器普及率の違いと日本の使用率低迷の原因を深堀していきます。

■  どうして日本の補聴器の使用率は低い?

海外では高い使用率となっている補聴器ですが、日本ではまだまだ低いのが現状です。

欧米での使用率は30~40%台となっていますが、日本では14%弱にとどまっているというのです。

なぜ、日本での使用率は海外に比べ低いのでしょうか?
その原因は大きく分けて二つに絞られます。

1.値段が高いから

日本での補聴器の普及価格帯は片耳だけで15~20万円。
高いものだと両耳で100万円かかる高級品もあるほどです。

しかも、日本では補聴器は保険適用にはならず、障害者総合支援法に基づく高度な難聴以上の人だけが原則1割負担で購入できるしくみになっています。

補聴器を使用しないと会話の聞き取りが難しくなる程度の中等度以下の人でも、購入後に医療費控除を受けられるシステムはあります。それには医師から「治療のために補聴器が必要である」という
診断書を書いてもらう必要があります。
申告時に税務署の判断にバラツキがあるため、控除が受けられないという例もあります。

そのため今は9割の人が自費で購入しており、高額なため片耳だけで済ますというケースがあります。

それでは英国の場合はどうでしょうか?

英国では国が指定する製品であれば無償で提供が受けられます。
しかも「難聴の程度にかかわらず」です。
公的補助制度の充実が普及率に大きな影響を与えているのは確実でしょう。

2.手軽に購入できるため、自分に合わないものを手に入れてしまう可能性

日本の補聴器は、誰でも簡単にインターネット等で入手できます。
購入の際、医師の診断書も必要ありませんし、販売する方も販売のための資格等はいりません。

これはつまり、補聴器に何の知識も持たない人に対して、「自分の好きな補聴器を、好きなように選んでください」と放り出されたようなものではないでしょうか。

割安だからとインターネットで買ったり、店頭で薦められるまま買ってしまい、「合わなかった」との苦情が国民生活センターに届くことも少なくありません。

それに対し、欧米では補聴器販売業者に公的資格制度があり、医師の診断を経てから聴力検査や耳型採取などを行います。

そのため、その人に合った補聴器を選ぶことができるので、日本の補聴器のようなミスマッチは起きにくいと言えます。

海外の高い普及率の背景には、こうした購入のための手厚いサポート体制があるのです。

■  使用率増加には行政のサポートが必要

日本の補聴器使用率を改善するには、個人や補聴器業界の働きかけだけでは難しそうなことが分かりました。

今後は一律の基準で税控除が受けられるようにするなど、補助制度自体の改善も求められます。

また無資格者が補聴器を販売できてしまうシステムも見直す必要があるのではないでしょうか?
就寝時以外は装着しておくものなので、自分に合ったものでないと効果を得られないのはもちろん、医学的根拠もないうえ安易に選んだ補聴器では、身体への影響も心配です。

海外のように高い使用率を実現するには、今の日本には数多くの高いハードルがあります。

全てクリアするには時間はかかるかもしれませんが、それに向けて少しずつでも前進してもらえたらと思います。

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