【終活】医療費抑制の切り札「ジェネリック医薬品」

高齢化や医療技術の高度化で膨らみ続ける日本の医療費。
いまその医療費を抑制する切り札として、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用促進が重視されています。

政府は2020年末までにジェネリック医薬品の普及率80%以上を達成するという目標を掲げ、数千億円規模での医療費削減を目指しています。

最も使われているのは沖縄県、最低は徳島県ですが、その使用率には実に20ポイントもの開きがあります。
全体では着実にその使用率を上昇させているジェネリック医薬品ですが、都道府県別にみると大きなバラつきがみられるのはなぜでしょう。

そして先発薬の半額からそれ以下で手に入るジェネリック医薬品は、本当に安心して使えるものなのでしょうか?

そこで今回はジェネリック医薬品についての特徴やメリット、地域性などについて考えていこうと思います。

■ジェネリック医薬品とは?

ジェネリック医薬品は新薬と同じ有効成分で作られ、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」にもとづくいろいろな厳しい基準や規制をクリアした薬のことです。

先発医薬品を開発したメーカーには、その新薬を独占的に販売できる特許期間が20~25年ありますが、その特許が切れたあとに製造・販売されているのがジェネリック医薬品です。

先発医薬品と同じ有効成分を同量含んでおり、同等の効き目があると認められ販売されています。
しかし、先発医薬品の特許が切れたあとに様々なメーカーがゾロゾロとその薬を出したため、ジェネリック医薬品はかつて「ゾロ薬」とも呼ばれていた時期があります。

先発医薬品に比べて薬の値段が5割程度、中にはそれ以上安くなるものもあるため、先発医薬品より劣るイメージがつきまとっていたのです。

例えば花粉症の人に馴染み深い「アレグラ」。
主成分のフェキソフェナジン塩酸塩錠という名称でジェネリック医薬品がたくさん出ています。
アレグラ錠60mgの薬価は65円ですが、ジェネリックなら多くが半額以下。
しかし安くても薬の効能は同じなのです。

その理由は極めて道理にかなっています。

通常先発医薬品の開発研究には、約9年~17年程度の長い歳月と、数百億円から数千億円もの莫大な時間とコストがかかっています。

この投資費用が薬の値段に反映されているのですが、ジェネリック医薬品の場合すでに有効性や安全性について先発医薬品で確認されていることから開発期間やコストが大幅に抑えられるのです。
結果的に薬価は先発医薬品の半額か、中にはそれ以下に設定することができます。

ジェネリック医薬品に対して「安くて本当に効き目はあるのか」「安全性は大丈夫なのか」という不安の声が聞かれることもありますが、決して先発医薬品に劣っているわけではないのです。

■地域差の大きいジェネリック医薬品使用率

全国の都道府県で使用率トップを走るのは沖縄県で、2017年3月末で79.9%と全国平均の68.6%を大きく上回ります。

その背景には経済的な事情が見えます。
沖縄県民の一人当たりの所得は2014年度で213万円と全国で最も低くなっており、所得対比でその医療費負担が県民に重くのしかかっていました。

そのため自治体や医療機関、調剤薬局などが、先発薬の半額ほどで済むジェネリック医薬品の普及に地域全体で取り組んできたのです。
しかし理由はほかにもあります。

それは米国統治時代の名残です。
日本の医療保険制度では、かかった医療費の1~3割を病院の窓口で支払います。
ですが当時の沖縄では医療費全額を患者が立て替え、後で自己負担分以外の費用を還付してもらう方式をとっていたため、立て替えとはいえ、大きな出費は嫌われたのです。

一方、全国でジェネリック医薬品の使用率が一番低いのは徳島県です。
2016年度末、全国で唯一その使用率が6割を切りました。

大手調剤薬局が他の地域に比べて少なく、県内展開の小規模店が多いことが要因です。
全国健康保険協会徳島支部によると、県内の大学病院前薬局はジェネリック医薬品の調剤率が3~4割程度でしたが、全国展開の薬局では8割を超えていました。

小規模な薬局では次々と登場するジェネリック医薬品の在庫を十分揃えることが難しいのです。

東京23区では最高の足立区が68.4%なのに対し、最低の新宿区は55.4%です。
一人当たりの所得は足立区は23区中で最低ですが、新宿区も8位と中間でした。

このことから所得が使用率の差の原因とも言い切れません。
それではこの「ばらつき」の要因は何なのでしょう?

答えは人口構成にありました。
国民健康保険では外国人留学生が多いことも影響し、新宿区は加入者を占める20~29歳の割合が約22%で、全国平均の約3倍と高くなっています。

一方、60~69歳の割合は18%と全国平均より14ポイントも低いのです。
厚生労働省によれば一人当たりの医療費は15~44歳は年間12万円ですが、70歳以上は84万円。

若者の多い新宿区の一人当たりの医療費は23区中で一番低く、医療費負担の軽い自治体ではジェネリック医薬品の使用を促すメリットが小さかったというのが、新宿区で使用率が下がった原因と考えられています。

使用率を上げることで健康面でも経済面でも豊かになれる人を増やし、厳しい保険財政を救う可能性も秘めているジェネリック医薬品。

普及率はまだあまり高くありませんが、特徴やメリットをよく理解した上で活用していくことは、個人はもちろん国レベルで考えても有益な選択肢の一つといえるでしょう。

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