【終活】少量の血液で認知症を診断

高齢化が進む日本で、大きな課題になっている高齢者の認知症。

現在、症状の進行を一定期間防ぐ薬はあるものの、発症後の根本的な治療はまだ確立されていません。
そのため、発症前の予防と早期発見が認知症対策における重要な鍵となっています。

しかしその発症リスクを知るための検査は、高価で大がかりな機器を使うものや身体への負担が大きな検査など、安易に実施できるものではありません。

ところが昨年、わずかな血液の量で簡単に認知症の一種であるアルツハイマー病の原因物質が脳に蓄積しているかどうかを調べられる検査方法が開発されました。

■社会問題となっている認知症

高齢化が加速する日本で、いま社会問題にもなっているのが高齢者の認知症です。

厚生労働省の発表によると、2025年には65歳以上の高齢者のうち認知症の人は700万人にまで増加すると予測されています。
これは65歳以上の5人に1人は認知症を患ってしまうという計算になります。

現在のところ発症してからの有効な治療法はなく未だ研究開発中のため、予防と早期発見がとても大切になってきます。

認知症の一種であるアルツハイマー病は、認知症の6割以上を占める進行性の病気ですが、脳内にアミロイドベータというタンパク質が異常に蓄積することが原因の一つとされています。

原因物質であるアミロイドベータの蓄積は発症の20~30年前から始まり、蓄積がある人は症状がなくても将来発症する危険性が高くなると考えられています。

アミロイドベータの蓄積の有無は現在、「PET」と「CSF検査」で調べています。

「PET」とはポジトロン断層撮影のことで、放射能を含む薬剤を用いる核医学検査の一種です。
CTやMRIで脳の形を見る画像検査に対し、PETは放射性薬剤を体内に取り込ませ、脳から放出される放射線を特殊なカメラで捉えます。

この検査では認知症の初期症状も見つけることができますが、PETを設置している病院や施設は限られています。

「CSF検査」は脳脊髄液を採取する検査のことです。

まず、体をエビのように丸めて横向きになり背骨の間に針を刺します。
脊髄腔(骨髄と硬膜の間の空間)に針を進めて5~10ccの脳脊髄液を採取し、その中に含まれる蛋白質を検査します。

現在認知症検査にはこの二つの検査が用いられていますが、PETは高額、CSF検査は患者への負担が大きいことが課題になっていました。

これに対し今回確立された手法は、わずか0.5mlの採血、そして安価にアルツハイマー病変を早期かつ正確に検査することを可能にしました。

■安価で簡単な新検査法

現在アルツハイマー病の診断には、脳に蓄積する3種のタンパク質を測定する方法が用いられています。

中でも「p-tau(リン酸化タウタンパク質)」は、アルツハイマー病患者の脳に特徴的な蓄積がみられるため、p-tauの蓄積量が病の重要な手掛かりになっています。

しかしp-tauは血液中に極めて少量しか存在しないため、これまでは患者に大きな負担をかけながら脳髄液を採取する方法をとるか、費用の高いPETで調べるしかありませんでした。

しかし今回開発された検査方法なら、わずか0.5mlの血液からp-tauが測定できるようになったので、病の早期発見や治療、状態改善につなげることができると期待されています。

アルツハイマー病患者や健康な人を含む、日本とオーストラリアの60~90歳の男女計232人を対象にこの手法を使って調べたところ、PETの検査結果と約90%一致しており、精度の高さも確認されています。

今回の方法が実用化されれば、従来よりも安価で正確、そして身体への負担を最小限にとどめ診断ができるようになるでしょう。

高齢者の検診などに導入し、症状がごく軽いうちに発見・予防する使い方も考えられます。
また薬を含む、提案されているさまざまな治療法の効果を判定するのに役立つでしょう。

■早期発見で認知症への対策を

アルツハイマー病は現在の医療では完治させることはできません。

現在、世界中の製薬会社がアミロイドベータを減らす新薬の開発を続けており、数種類の臨床試験が行われています。
しかし有効性の実証は難しく、実用化に至るまでにはまだ時間がかかるようです。

いったん発症してしまうと現状では介入できる治療法はなく、脳の機能を取り戻すのが困難なアルツハイマー病。
だからこそ、早く見つけて手を打つことが重要
になってきます。

発症前の段階「少しもの忘れが気になる」程度の初期症状であれば、生活習慣の改善や認知力を上げるトレーニングなどを続けることで、以前の正常な状態に引き戻すことが可能です。

このような先制医療を積極的に行っていくためにも、安価で簡単に実施できる新しい診断方法の実用化が待ち望まれます。

そして将来、認知症の治療法や予防法が確立されたとき、今回開発された検査方法と合わせることでアルツハイマー病を巡る状況は一変する未来がやってくるかもしれません。

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