増える一人暮らし

国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、22年後の2040年には全世帯数の39.3%が一人暮らしになるとしています。

晩婚化に加え、未婚や離婚の増加、高齢化による配偶者との死別などが要因と分析されており、この傾向は今後も続く見通しです。

若者の一人暮らしなら大きな問題になりませんが、いま増加しているのは中年層や高齢者の一人暮らし。

かつては同居家族がいることが当たり前で、お互いに生活していく上での様々なリスクに対応してきた日本人の暮らしは、ここにきて大きく変わりつつあります。

そこで今回は高齢者の一人暮らしの増加とそのリスク、対策について考えていきたいと思います。

●一人暮らしが2040年には4割に…

2040年は1970年代前半に生まれた「団塊ジュニア世代」が高齢者になる時期にあたります。

推計によるとその頃の世帯総数は5076万世帯で、そのうち一人暮らしは1994万世帯にのぼり、実に全体の39.3%を占める割合になります。

驚きなのは、この中の約半数近い896万世帯が高齢者の独居であることです。
65歳以上での一人暮らしの割合は、男性で5人に1人の20.8%、女性で4人に1人の24.5%まで達しているのです。

ではなぜ高齢者の一人暮らしが増加していくのでしょうか?
その要因の一つに、生涯未婚率の上昇が考えられます。

50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合を「生涯未婚率」と呼びますが、2035年の生涯未婚率は男性で28.9%、女性では19.1%になると推計されています。

未婚者は配偶者がいないという点で、どうしても単身世帯になりやすい傾向にあるのです。

一方、高齢者で一人暮らしが増加する大きな要因は、配偶者との死別や子どもと同居する人の割合が減ったことが影響していると考えられます。

例えば妻と死別した70代男性のうち、子どもと同居する人の割合は1995年の57.3%から、2010年には40.4%まで低下しており、わずか15年で17%も減った同居率は、今後も減少する傾向にあると考えられています。

●一人暮らしのリスク

一人暮らしには、いざという時に支えてくれる家族がいません。
失業や貧困、社会的な孤立など、一人であるがゆえ単身世帯にはさまざまなリスクが伴います。

特に貧困に陥る人の比率が高く、医療や介護の負担が重くなる中、
貯蓄もなくギリギリの生活を余儀なくされる「老後破産」に追い込まれる人も少なくありません。

一人暮らしの高齢者の収入構成を見てみると、公的年金が約7割を占めており、その割合は大きいです。
そこで年金との関係から高齢者の単身世帯が貧困に陥りやすい要因を見てみましょう。

「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均支給額は月額で55,464円。
40年間保険料を支払っていても、月額64,941円が制度上の満額です。

これでは国民年金(基礎年金)のみに頼った生活はかなり厳しいでしょう。

また単身世帯は持ち家率が低く、その家賃負担が重くのしかかることも懸念されます。
この背景には、二人以上世帯では結婚や出産などに合わせ住居の購入を検討する機会がありますが、単身世帯では未婚者を中心にこのような機会が少ないことがあげられます。

さらに、社会とのつながりが希薄になり孤立するリスクもあります。

数日間ほとんど会話をすることのない一人暮らしの高齢者は、今や男性で3割に達するという調査もあります。

内閣府により発表された「高齢者の経済生活に関する意識調査」によると、一人暮らしをしている高齢者の会話の頻度は、電話や電子メールを含んだとしても2~3日に1回が最も多く、日常生活での他者とのコミュニケーションがほとんど取れていない実情が浮き彫りになっています。

また社会から孤立することで、困った時に頼れる人が少ないのも一人暮らしの高齢者には多い傾向があります。

急に体調を崩したり怪我をしてしまっても、助けを求めることができない状況に立たされているのです。

●孤立死のリスク

社会との関係が疎遠な人ほど孤立死の危険性も高まります。

一人暮らしの高齢者の6割以上は、日常生活の中で近所付き合いがほとんどありません。
特に男性は女性に比べ、日常的な近所付き合いなどのコミュニケーションが苦手な人が多く、地域コミュニティへの参加を拒否するケースも少なくありません。

そのため定年退職などで社会との接点が減ってしまうと孤立しやすい状況に陥ります。

また高齢の男性の場合、料理や掃除などの家事を苦手とする人が多いため、一人暮らしでは栄養状態や衛生環境で生活の質が低下しがちです。

その結果、病気や衰弱など危険な状況に陥る確率も高く、最悪の場合周囲に気づかれないまま手遅れになってしまうケースもあるのです。

孤立死について確固たる定義はありませんが、内閣府の高齢社会白書には「誰にも看取られず息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な孤立死」と表記されています。

目を背けたくなるような痛ましい表現ですが、一人暮らしをしていくうえではどうしても背負わなければならないリスクです。

このリスクを少しでも軽減するために、多少面倒だと感じても社会とのつながりを持ち続けることは、とても大切なことなのです。</span>

●孤立を防ぐしくみ作りを

日本の約4割の世帯が一人で暮らす時代が20年余後にやってきます。

特に高齢化や未婚化の影響で一人暮らしの高齢者増加が著しく、家族の助けを得にくい分、医療や介護、年金など社会保障費の膨張は避けられません。

公的サービスだけで生活全般をサポートするのは、年々厳しくなる国の財政状況からは
難しく、地域社会が中心になってそのような高齢者を支えるしくみ作りを進めていくのが急務となっています。

中にはすでに、郵便配達員、宅急便の配達員などによる声かけや、自治体によっては定期的に職員が自宅を訪問し、安否確認をするサービスなどを導入する地域もでてきています。

同時に高齢者の自立も不可欠です。
持病や要介護度を悪化させないような取り組みを進めたり、働けるうちは社会に参加し働くことで、人とのつながりを保ち続けるのも良いでしょう。

また、現役世代に過度な負担がかからないような改革も必要です。
その一つとして、生涯未婚率の増加を食い止める対策があげられます。

結婚を希望しながら、非正規雇用による低収入や長時間労働がネックとなり踏み出せない若者は多いです。
官民挙げて一刻も早く働き方改革に本腰を入れることが求められています。

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