高齢者の孤独化などを背景に、身寄りのない人が亡くなった後に残した現金を市町村が預かる「遺留金」が増えてきています。
今回はその「遺留金」についてお話いたします。
■「遺留金」の処理
身寄りのない人が亡くなると、市町村は墓地埋葬法(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei15/)などに基づき葬儀を行います。
その費用は本人の所持金から差し引き、残高があれば相続人に引き継がれますが、手続きが円滑に進むことは少ないようです。
戸籍を辿り親族関係を調べるだけで数ヶ月かかり、たとえ連絡が取れたとしても対応を拒まれることもあります。
「遺留金」は相続人がいなかったり相続を放棄した場合、市町村が民法に基づき家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立て、相続財産管理人となった弁護士が国庫に遺留金を収める仕組みがあります。
この相続財産管理人になってもらう費用として弁護士に30万〜50万円程度かかり、本人の遺留金から支払われます。
しかし遺留金がこれより少なければ残りの費用は自治体側の持ち出しとなります。
「少額の遺産処理に公金を使うことは市民の理解が得られない」として相続財産管理人の申し立てを見送るケースも多いいようです。
こうして見送られた少額の遺留金は自治体の「遺留金管理口座」に塩漬けになり、宙に浮いた状態となります。
■「遺留金」は10億円
では現在どれぐらいの遺留金が各自治体に保管されているのでしょうか?
自治体が保管せざるを得なくなった遺留金は20政令都市の合計で約10億7000万円。
最も多い大阪市は2017年3月末時点で約7億2000万円。
その中でも生活保護受給者が残したお金が多いようです。
現金のみを計上している自治体もあるため、銀行の預金などを含めると引き取り手のない遺産はさらに膨らむと見られています。
65歳以上の単身世帯が600万人近くに上る中、自治体はこうした宙に浮いた遺留金の活用策を示してほしいと国に法整備を求めています。
■「遺留金」の有効活用
こうした多額の遺留金について国はどう考えているのでしょうか。
民法には第三者が個人の財産などを管理する際の手続きを定めた「事務管理」の規定があります。
法務省は「遺留金の保管は事務管理を自治体が担っていると言え、法令上の問題はない」としています。
しかし、指定都市市長会は2017年7月に遺留金の活用法について遺留金を国ではなく地方自治体に帰属させるよう求めていましたが、民法の「相続人がいない財産は国庫に帰属する」という規定のため条例への盛り込みを断念しました。
そこで神戸市は、法律に反しない範囲で遺留金を活用しようと、身寄りのない高齢者の相続人を捜すための調査費などを本人の遺留金から差し引けるようにする、全国で初の条例案を2018年2月の市議会に提出し、同年4月に条例が施行されました。
施行された条例は「遺留金を歳入歳出外現金として保管する」と定め、相続人を捜すための調査費や人件費を本人の遺留金から支出できるようにしました。
(※歳入歳出外現金とは、地方公共団体が保管する当該地方公共団体以外の公法人の所有に属する現金及び私法人又は個人の所有に属する現金をいいます。)
しかし、条例が制定されても遺留金が私有財産という位置付けには変わりありません。
使途が限定されている限り、抜本的な問題の解決には遠いようです。
こうした宙に浮いた遺留金を、高齢者の福祉施策の財源とするなど有効に活用できれば、相続人のいない方たちが残した遺産も役立てられ、本人たちも喜ぶのではないでしょうか。
遺留金は国庫に収める手続きにも費用がかかります。
身寄りがない場合でも、遺産を保持している場合なら遺言状など自分の意思表示をするものが必要だと思います。
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