【終活】高齢社会対策大網案とは

2018年1月に、政府は高齢者施策の指針となる「高齢社会対策大網案」を見直し、70歳を超えて公的年金を受け取り始める場合は毎月の受給額を上乗せする方向で検討を始めました。
今回は高齢者施策の指針となる「高齢社会対策大網案」と合わせて高齢者の就労についてお話していきます。

■「高齢社会対策大網案」における年金改革

「高齢社会対策大網案」とは、政府が推進すべき基本的、総合的な高齢社会対策の指針として定められるもので、高齢社会対策基本法に基づき政府が作成します。
最初の大網が策定されたのは1996年経済社会情勢の変化に応じて、その5年後の2001年に最初の見直しが行われました。さらにその10年後の2011年に2度目の見直しが行われることが閣議決定され、翌2012年に大網案が策定されました。
「高齢社会対策大網案」は以下の6つの考え方によって準じる形でまとめられています。

●「高齢者」の捉え方に対する国民の意識改革
●老後の安心を確保するための社会保障制度の確立
●高齢者の意欲、能力の活用
●安定的な地域社会の実現(地域コミュニティの再構築)
●安全・安心な生活環境の実現
●「人生90年時代」への備えと世代循環の実現

具体的な内容をみると、基本的施策としては以下の通りです。

●年金の受給開始年齢を70歳以降でもできるようにする
●介護職員の処遇改善を行い、人材を確保
●仕事と介護の両立を可能とする雇用・就業環境を整備
●起業の意欲を持つ高齢者に対して日本政策金融公庫の融資を含む資金調達の支援
●副業・兼業を普及促進
●介護基盤およびサービス付き高齢者向け住宅を整備

主な内容は、年金の受給開始の年齢についての選択肢を追加したり、高齢者の世話をするために離職する介護離職への対策、介護職員の増加を目指すもののようです。

年金の受給開始は原則65歳ですが、60〜70歳の間で選ぶこともできます。
早く受け取り始めるほど毎月の受給額は減り、遅らせると受給額は増えます。
今の増額率は70歳まで遅らせた時の42%が最大となり、それを70歳超までに広げることはライフスタイルに応じた選択肢を広げる意義があります。
ただ、65歳以降に遅らせる人は全体の1.5%とごくわずかです。
なぜこのような低い数値が出たかというと、制度の周知がされていない点や高齢者の雇用環境が整っていないため、70歳超まで広げることができないという点が考えられます。

■高齢者の就労と社会保障制度の結びつき

内閣府が60歳以上の人に何歳まで仕事をしたいか調査をしたところ、70歳以上が「働けるうちはいつまでも」と答えた方が半数以上だったのですが、総務省の昨年12月の労働力調査では、65歳以上の労働力人口比率は23%と少ない数値となりました。
この数値から、働きたくても実際に就労できている高齢者は少ないということがわかります。
そこで政府は年金の見直しと合わせて高齢者の就労促進も打ち出したのです。

見直しされた大網は、【65歳以上を一律に「高齢者」と見る一般的な傾向は現状に照らせばもはや現実的なものではなくなりつつある】と指摘し、超高齢社会を迎え高齢でも健康で働ける人は「支えられる側」から「支える側」に回ってもらう考えで、社会保障制度の転換点となる可能性もあると考えています。
社会保障制度の給付費は年々増加し、国民生活そして日本の財政を圧迫しています。
社会保障給付費は「年金」「医療」「福祉その他」の3つの項目から成り立っており、その負担内訳は全体の59.4%が保険料、そして残りの40.6%が国と地方自治体の負担、すなわち税金でまかなわれています。
社会保障給付費の増額化は、保険料負担増・税負担増として国民に重くのしかかり、この社会保障給付費を下げることに国は力を入れています。

社会保障給付費の推移を見ると1970年では3.5兆円、1990年では47.4兆円、2010年では105.2兆円とここ40年間は急速に増え続けており、将来的にさらに増加していくと予想されています。
社会保障給付費の増大化を抑えるには、「年金」と「医療」のこの2つの給付費をできるだけ抑えることがカギとなり、高齢者の就業率を高めることで社会保障給付費を抑えることができます。

■エイジレス社会を目指して

高齢者の就業率を高めたいと考える背景には様々な理由がありますが、元気な高齢者が長く働ける環境を作ることは働く本人たちにとっても選択肢が広がり有意義なライフスタイルを過ごすことができます。
しかし、「働きたい」ではなく「働かざるを得ない」という高齢者もいることを忘れてはいけません。
内閣府の調査では60歳以上の3人に1人が暮らし向きに心配があると答えています。
実際、生活保護を受ける高齢者世帯は昨年11月で86万6千世帯と過去1年で2万8千世帯増えています。
高齢者世帯は保護を受けている世帯の53%を占め、その比率も年々高まってきています。
ところが政府は生活保護費を今年から一部世帯で段階的に引き下げ、年金も財政安定のため受給額の抑制策をすでに導入し、高齢者が受け取る額が今後徐々に目減りするとみられています。

今回お話した「高齢社会対策大網案」には
「年齢区分による画一化を見直し、全ての年代の人が希望に応じて活躍できるエイジレス社会を目指す」を掲げていますが、支援が削減されては活躍は愚か生活自体に支障をきたすことになります。
超高齢化社会において、これから高齢者に課せられる問題は増えつつあります。
常に正しい知識を得て、自分にあったライフスタイルを見つけることが大切です。

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