【終活】ITで対策、認知症徘徊②

前回お話させていただいた認知症患者による徘徊の問題。
特に終活世代にとっては気になる社会問題ではないでしょうか。

徘徊によって行方不明となる認知症患者の人数は年々増え続けており、
徘徊で事故に合ってしまい介護していた家族の責任を問われるなど、
介護のあり方についても問題とされました。

こうした中、徘徊の対策としてITを活用する動きが増えつつあります。
今回は、そんなITによる徘徊対策をご紹介いたします。

ITで徘徊を防ぐ 自治体の取り組み

認知症患者の増加により、急務になっている徘徊対策。

しかし少子化や核家族化などが相まって、夫婦だけで生活する高齢者や独居の高齢者が
増えているため、本人や家族だけで対策にあたるには限界がある
のが現状です。
そこでその負担を少しでも減らそうと、ITを活用する自治体が増えています。

群馬県高崎市では2015年10月から「はいかい高齢者救援システム」というサービスを
開始しました。

小型のGPS端末を無料で貸し出し、
「見守りセンター」に電話すれば24時間の対応で、
徘徊している高齢者の位置情報をメールなどで知らせてもらえるので、
「どこにいるか?家に向かっているか?」などがすぐに分かる上、
電話1本で対応してくれるこのサービスは、
IT機器に不慣れな方でも利用しやすくなっています。

「はいかい高齢者救援システム」は開始からこれまでに約220人に利用され、
延べ132人を保護しました。
うち9割は通報から1時間以内に発見できています。

また、兵庫県伊丹市では阪神電気鉄道と協働で、2016年から「まちなかミマモルメ」という
見守りサービスを始めました。
このサービスは近距離無線通信「ブルートゥース」を活用しているのが特徴です。

街中に1000個のビーコン受信機を設置し、
高齢者が携帯するビーコン発信機の信号をキャッチすると、
専用アプリで家族にその地点を通過したことを知らせるサービスになっています。

さらに市民ボランティアが持つスマホに専用アプリを取り込めば、
受信機の役割を担える
のも利点です。
自身は何もすることがなく、アプリを入れるだけで臨時のビーコン受信機となるので、
街中等で迷った高齢者とボランティアがすれ違えば自動的に位置情報を
届けることができます。

アプリ利用者が多いほど通過した場所の情報が多く集まり、探しやすくなるしくみ
なっているのです。

徘徊対策グッズも登場

ITを活用したサービスの他にも、
徘徊による行方不明を防ぐための身元確認グッズが注目を集めています。

埼玉県入間市が全国に先駆けて導入した「爪Qシール」。
これは自治体の連絡先とその高齢者に割り当てられた番号をあらかじめQRコードシールに
登録しておき、それを直接爪に貼り付けるというものです。

徘徊している高齢者のQRコードをスマートフォンなどで読み取ることで、
利用者の身元が確認できるしくみになっています。

また爪に直接貼り付けることで発信機や携帯のように身に付けて持ち出す必要がなく、
手ぶらで外に出て行っても簡単に身元確認ができる
利点もあります。

実際に使っている利用者からは「とても助かる」という声が多く届いていますが、
直接身体にシールを貼るのは人権侵害に相当するのではないのか?
という疑問の声も目立っています。

実は開発元の会社でさえ、開発中に「やめた方がいいのではないか」と悩む機会が
何度もあったと言います。

しかし認知症患者の家族から、「大事な家族がいなくなったときに直接身体に貼ることが
できる商品なら、どんな状況であっても安心できる」
などの好意的な意見が多数寄せられ
実用化に至ったそうです。

高齢者の尊厳はとても重要なことです。
しかし家族にとっては無事に家まで帰ることができる方が大切なのも理解できます。
賛否両論ありますが、いざというときに発見の手がかりになり得る爪Qシールは
認知症患者が増えていく今後、どんどん普及していくのかもしれません。

徘徊対策で最も大事なことは…

徘徊から行方不明になる高齢者は年々増えています。
事故に遭うリスクも含めて危険な行動なので、
できるだけ早く保護する必要があります。

しかし、家族が認知症であることを周囲に隠し自分たちだけで解決しようとしたために、
悲しい結果に終わるケースが後を絶ちません。
こうしたリスクを避けるために、患者家族は認知症が決して特別な病気ではない
理解することが大事です。
そして利用できるサービスはどんどん活用していくべきでしょう。

そのためには周囲の人たちも認知症や徘徊を理解し、地域全体でそうした高齢者を
見守っていける体制づくりを進めることが重要
になってきます。
特に今回紹介した、IT技術を活用した徘徊対策は便利で心強いですが、
地域の人が高齢者の見守りに関心を持つことが大前提になっています。
つまり技術だけでは解決できないのです。

85歳以上の4割に起きる認知症は、
決して他人事ではありません。
終活世代に限らず、若い世代の方々も協力して社会全体で見守ることができれば、
悲しい事故や出来事を減らしていけるのではないでしょうか。

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エンディングノートや遺言をつくることだけが終活ではありません。
終活とは成熟した大人がこれからの人生をどのように楽しみ、
次の世代に何を託すのかを決める作業です。
何かを決めるということは大変な作業ですが、
それだけにその決断は大切なヒトへのやさしさや愛情になるのではないでしょうか。
リガーズサービスのコラムが、あなたの充実した終活のお役に立てれば幸いです。

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