厚生労働省の調べでは、認知症高齢者は12年に約460万人いると発表され、
この結果から、2025年には5割増の約700万人に増える見通しです。
65歳以上の約5人に1人が認知症になると推測されている今日において、
家庭以外にも産業界でも認知症について関心が持たれています。
産業と認知症の関係について、考えてみましょう。
高齢化の影響は企業にも…上昇する社長の平均年齢
東京商工リサーチによると、2016年の全国の社長の平均年齢は61.19%で、
前年度の0.3倍という結果が出ています。
また、2016年の社長の年齢分布も60代の構成比が33.99%となっており、
後継者難など様々な理由から、平均年齢が上昇傾向にあると伺えます。
次に産業別の社長の平均年齢のグラフを見てみましょう。
産業別で見た場合の社長の平均年齢としてもっとも高い数値となったものは、
不動産業の63.01歳、次いで卸売業の62.56歳で、製造業や小売業が後に続く結果となっています。
もっとも低い数値となったのは情報通信業の56.50歳でした。
なぜ社長の高齢化が年々進んでいるのか?
その理由として、若者の数が全体的に減少しているため、
若い世代の起業率が減少していること、企業内の世代交代が進んでいないことが理由に挙げられます。
帝国データバンクの表を見ると、社長交代率はわずか4%未満で推移しています。
このままのペースでは経営者の超高齢化がさらに進んで、
ますます多くの企業が存続の危機にさらされるであろうことが容易に推測可能です。
事業承継が進まない理由の第一位が「後継者がいない」こと。
多くの経営者が「後継者がいないので引退しようにもできない。」と嘆いているようです。
後継者不在の企業は全体の3分の2を占めており、社長年齢別では60歳代が54%、70歳代が43%、80歳代以上が34%となっています。
後継者育成にかかる期間は5~10年ともいわれますので、80歳以上でも3社に1社が後継者不在というのは、非常に深刻な数値です。
さらに社長の高齢化が進む中で、その社長が認知症になってしまい、
事業に影響を及ぼしている企業が増えてきています。
経営者が認知症になったら?そのとき発生する問題とは?
経営者が認知症になると、契約行為や権利の行使、義務の負担など
様々なことに制限がかかるようになります。
混乱を防ぐための対応として、任意後見制度や民事信託を
利用することがおすすめされます。
任意後見制度は本人に十分な判断能力があるうちに、
予め公証人役場で任意後見契約を結んでおき、
認知症の症状が現れたら家庭裁判所に申し立てをして、
その契約に基づいて任意後見人が本人の援助をする制度です。
民事信託は財産の所有者の家族や、親族など信頼できる人が
受託者(=財産名義人)となり、財産を託され管理や承継を行う制度です。
平成18年12月の信託業法の改正により、営利目的でなければ信託業免許を
持たない法人や個人間においても受託者になれるようになりました。
しかし、民事信託において管理の対象になるのは財産についてのみなので、
認知症の本人に代わって入院や入所の契約をすることや、
悪徳商法に騙された契約を取り消す行為などは、
決して民事信託で代行できるものではありませんので、併用を考えておくと良いでしょう。
認知症については前回のコラム「5人に1人が認知症の時代に…その時あなたは?家族は?」でも詳しく取り上げています。
ぜひご覧ください。
認知症により生まれるもうひとつの経営トラブル「介護離職」とは?
認知症が経営に影響を与えるのは、経営者が認知症になった場合に限る話ではありません。
厚労省が実施している「就業構造基本調査(2012年)」によると、
介護のために仕事を辞める、
「介護離職」の人数は2011年10月から2012年9月の1年間だけでも、
10万人以上にものぼっています。
その中で、認知症による離職のケースは全体の約16%と言われています。
また、介護離職した後に再就職を望んだとしても、
仕事から離れていた期間の長さから再就職は難しいという結果が出ているのが現状です。
仕事と介護を両立させるために、知っておきたい制度
国の制度「育児・介護法」について紹介します。
例えば、要介護状態にある家族を介護する労働者が雇用主に対して申請を行えば、
対象家族1人につき最大通算93日の介護休業が取得することが出来ます。
また、買い物や通院の付き添い、介護などを行うために、
年間5日まで介護休暇を取得することが出来ることも定められており、
働きながら介護を行うことに対し企業側も労働者の雇用を守るための処置が求められています。
こうした制度を利用すれば、一時的に介護に集中できる環境をつくることができるため、
仕事と介護を両立することも可能です。
大きなトラブルを防ぐ為に…もしもの時に備えて出来ることを
高齢化が進む現代において、認知症はもはや他人事とは言えない問題です。
また、認知症は経済にも影響を及ぼしますが、その中で家族間や会社内の人間関係にも影響を及ぼします。
「自分は大丈夫」と思い込まず、日頃から定期検診を受けたり、
もしものことが起こったときに対処出来るように、認知症に関する知識を深め、
家族や社内で準備をするようにしましょう。
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