【終活】増える高齢者の“栄養失調”

いま、高齢者の「低栄養」が増えています。

低栄養とは、食事量が減ることで主にエネルギーとたんぱく質が不足し健康維持のために必要な栄養を摂取できていない状態を言います。

高齢者の栄養不足は、筋肉や骨の衰えはもちろん、免疫力の低下や、さらには認知症をも招きかねません。
このように老化をますます推し進めてしまう低栄養とは、どのようにして引き起こされるのか、その原因と対策を紹介していきます。

本当は怖い低栄養

カロリー過多はメタボにつながるので、粗食が健康に良い…という認識はどの世代にも広く根付いているようですが、実は高齢者に関してはそれが当てはまりません。

先にも書いたように、高齢者が低栄養に陥ると老化が進み、死亡リスクまでもが高くなってしまうのです。

一見大げさなようですが、低栄養状態になると身体を動かすエネルギーや、骨や筋肉をつくるタンパク質などが不足することで、身体の機能が知らず知らずのうちに低下していきます。

すると免疫機能が下がり細菌やウイルスに感染しやすくなったり、認知症の前段階である認知機能の低下を引き起こす危険性も上がってしまいます。

さらにはタンパク質不足で血管が弱くなり、動脈硬化や脳卒中を引き起こすリスクが高まります。

その結果、介護が必要な状態に陥り、最悪の場合死に至ることもあるのです。

なぜいま高齢者が栄養不足?

どうしてこの豊かな時代に栄養不足?と疑問を持たれるかと思いますが、厚生労働省の国民健康・栄養調査によると65歳以上の高齢者の2割近くが低栄養傾向とされています。

高齢者が低栄養になってしまう原因はさまざまです。大きく分けると加齢に伴う身体機能の低下によるものと、心理的・環境的なものの二つに分けられます。

身体機能の低下による低栄養
■消化機能の低下
消化液の分泌が減少すると栄養素が十分に消化吸収されなくなってしまいます。
また、腸の運動量が低下し便秘がちになることで、食欲不振を招いてしまいます。
■味覚の低下
味覚の低下で味の濃いものを好むようになりますが、高血圧などの問題を抱えていると減塩傾向になります。物足りない食事を摂ることになり、食べようという意欲までも低下してしまいます。
■咀嚼力や嚥下力の低下
噛む力や飲み込む力が低下すると、うまく食事が取れなくなり、歯ごたえのある肉や繊維質の多い野菜、果物などが不足してしまいます。食べやすいお粥やペースト状の食事が中心になると、必要なエネルギーや栄養素が不足してしまいます。

心理的・環境的問題による低栄養
■一人暮らし、または夫婦だけの生活
家族がいたころは健康に気を遣って食事を作っていた人も、自分一人のために料理をするのはおっくうです。それにより食事を簡単にすませるようになり、栄養バランスが偏ってしまいます。
■認知症の影響
認知症を患った人が食事を準備すると、いつも決まった食事になってしまうことがあります。
バランスの崩れた食事になり栄養も偏ります。低栄養は認知機能の低下を招くこともあるので、さらに認知機能が低下していくという悪循環になってしまいます。
■介護力不足
介護をする家族が低栄養の意味を知らず、むしろ生活習慣病を気にしてカロリーや脂質を控えた食事を準備している場合も少なくありません。
栄養不足による身体機能の低下は緩やかなので、低栄養が原因であることを家族も気づきにくい傾向があります。

まずは自分の状態を知りましょう!

低栄養は自覚症状がなくても進んでいることが多く、本人も周囲も気づきにくいことがあります。重症化すると重大な健康問題を引き起こしかねない低栄養を防ぐために、まずは自分が低栄養かどうかチェックしてみましょう。

もし2つ以上当てはまれば、かかりつけ医に栄養状態を診てもらい栄養を補いましょう。

特に体重の減少は低栄養を発見するために最も重要な指標なので、定期的に測れば低栄養の早期発見・対策の足がかりになるはずです。

低栄養対策

もし低栄養になってしまったら回復するために、または低栄養を防ぐためにどのような方法があるのでしょうか?
食事を摂ることはもちろんですが、それ以外にも周囲のサポートがあれば一人で頑張るよりも効果が大きいようです。

■1日3食きちんと食べる
一度に食べられる量が少ないので、1日3回食事をしないとエネルギーやタンパク質が不足してしまいます。また、規則正しく食事することは生活リズムを整えることにも繋がり、自ずと活動量も増え空腹感を感じられるようになります。

■さまざまな品目をバランスよく
肉や魚、野菜、穀物などバランスの良い食事を心がけましょう。とはいえ、独居の場合など自分で食事を準備するのが難しいときは、栄養バランスをきちんと考えて作られているお惣菜や宅配サービスの利用も良いでしょう。

■誰かと一緒に食事
家族や友人など、誰かと一緒に食事をすれば会話も弾み、自然に食事が進むようになります。
また自分だけだとなかなか気づけない偏った食生活を見直す良い機会にもなるでしょう。

■栄養調整食品を利用する
どうしても食事量が増やせない場合は、栄養調整食品の利用も検討しましょう。
少量でも高タンパク高カロリーで不足しがちな栄養素を補うことができます。
介護する人にとっても心強いサポーターになるでしょう。

元気で健康な生活を長く続けるために…

今後、日本では確実に高齢者が増えていきます。その中で大切なことは、要介護にならず元気に歳を重ねていくことです。

その意味からも、今回のテーマである低栄養への対策をしっかり行っていくことは、とても重要なことでしょう。

食べることは命に直結している、という意識をしっかりもってバランスのとれた食生活を送っていただきたいと思います。

 


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何かを決めるということは大変な作業ですが、それだけにその決断は大切なヒトへのやさしさや愛情になるのではないでしょうか。

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