【終活】遺骨でつくった「お骨仏(おこつぼとけ)」

今回は、前代未聞のしきたり!?遺骨を使ってつくる「お骨仏」が造立している一心寺から現代の供養を見ていきたいと思います。

●一心寺の歴史と「お骨仏」の成り立ち

大阪市天王寺区にある一心寺の発祥は、文治元年(1185)のこと。
もとは近くの四天王寺の付属の草庵でした。江戸時代に入り徳川家康の八男・仙千代が若くして亡くなり、一心寺で執り行った葬儀の住職が、家康と同郷の出身であったことや家康が浄土真宗の信者であったことから結びつきが強くなり、慶長19年(1614)の大阪冬の陣で家康の本陣がおかれることになりました。

一心寺は幕藩体制下では、寺社奉行直轄の檀家を持たない特別寺院という位置づけでしたが、幕末になると衰退し、なんらかの収益源を得ないといけなくなったため江戸時代末期から、庶民向けに宗派を問わない無縁の精霊を供養する「施餓鬼(せがき)供養」を始めました。宗派を問わない供養が庶民にうけ「おせがき寺」と親しまれ大評判になります。

この評判から大阪に丁稚奉公で出てきた地方の次男坊らが、大阪で先祖供養をしたいと先祖の分骨を一心寺に寄せるようになりました。しかし、その人気ぶりから納骨堂が限界を迎え、明治20年(1887)に遺骨を粉砕し鋳型で固めて阿弥陀如来像をつくったのが「お骨仏」の始まりと言われています。

「お骨仏」は現在では10年間にわたって遺骨を集め、1体を造立します。
増高は5尺(1m50cm)納骨堂には8体の「お骨仏」が安置され、遺骨の総数は200万柱と一心寺は国内最大の永代供養と言っても過言ではありません。
2020年1月現在で、大阪市の無形民族文化財にも指定されています。

ここ10年で納骨が急増!! 〜変わる供養のカタチ〜

●増え続ける納骨

最古の「お骨仏」阿弥陀如来像は、嘉永4年(1851)から36年間かけて集められたもので、この時に集められた遺骨は5万柱以上と言われています。
戦前までに6体の「お骨仏」がつくられましたが、大戦中の空襲で消失してしまいました。
焼け跡から6体分の遺骨を拾い集め、戦後に納骨された分と合わせて1体が造立されてから現在まで10年に1期ごと1体をつくるというペースを保ってきました。

戦後から2006年まで1体あたりの納骨数は約13万柱〜16万柱。分骨用に小分けされた骨の場合はさほどの分量にはなりませんが、なかには全骨を納めたいというニーズもあり、受け入れてきました。しかし、2007年から2016年までの納骨数は22万柱と急激に増え、いよいよ「供給過多」になってきました。

●「永代供養」「墓じまい」ブーム

一心寺の納骨が増えている背景には一族のお墓に入らない「永代供養」ブーム。そして「墓じまい」や「改葬」の増加があります。さらに日本は多死社会に入っており、現在死者数は140万人ほどですが、2030年には160万人を突破する見込みです。2060年以降も年間150万人〜160万人レベルの死者数が続くと予想されています。

「お骨仏」が人気の理由

●経済が見える供養のカタチ

では、なぜそれほどまでに「お骨仏」が人気なのでしょうか。
そこには現代の景気や経済が深く関わっています。
一心寺の納骨冥加料は小骨や分骨で1万〜2万円。胴骨を含む容量の多いケースや全骨で1万5000円〜3万円と格安です。

一般的に1人用の納骨堂を利用する場合、全国平均で50万円程度と言われています。別途管理費も必要な納骨堂もあるため、管理費として1年あたり2000〜2万円程度さらにかかります。
また家族用の納骨堂を借りた場合、平均で50万〜200万円程度とかなり高額になります。
そんな現状から、生活窮困者が一心寺に全骨を納骨したいというケースは少なくなく、一心寺は本来の「お骨仏」の趣旨とは異なるものの、なるべく全骨を受け入れてきました。
そうした経緯から「お骨仏」の人気がますます高くなっていったと考えられます。

しかし、最近では宅配便を使って遺骨を送る「送骨」をされる遺族もいます。
故郷やご先祖様を思う「供養の心」があってこそ輝く「お骨仏」。
心ない、いわば「遺骨処理」では意味がありません。亡き方の面影が見えると言われる「お骨仏」に祈りをささげながら「供養とは何か」を今一度考えてほしいと思います。

【公式ホームページ】

リガーズサービスのコラムについて
リガーズサービスのコラムでは、医療や福利厚生、
より良いシニアライフの考察に役立つ情報を幅広いジャンルからピックアップして配信します。
エンディングノートや遺言をつくることだけが終活ではありません。
終活とは成熟した大人がこれからの人生をどのように楽しみ、次の世代に何を託すのかを決める作業です。
何かを決めるということは大変な作業ですが、
それだけにその決断は大切なヒトへのやさしさや愛情になるのではないでしょうか。
リガーズサービスのコラムが、あなたの充実した終活のお役に立てれば幸いです。

カテゴリー: 終活 パーマリンク