「声がかさつくようになった」「話が聞き取りにくいと言われることが増えた」など、声の不調を感じることはありませんか?
そのうち治るだろうと放置してしまったり、あまり気にすることのない変調かもしれませんが、実は体全体の不調を知らせてくれるサインかもしれません。
声は肺炎や大動脈瘤、さらには心の不調など、様々な心身の異常を知らせてくれる健康のバロメーターともいわれます。
たかが声ですが、その変調にきちんと対応できるかどうかが大きな分かれ道になっていることもあるのです。
■まずは自分の声の調子を知りましょう
息がもれるばかりで声にならない「かすれ声」を加齢のせいだと放置してはいけません。
ただの老化かと思っていたら、実は重病からくるサインの場合もあるからです。
声がかすれる原因は声帯の不調にあります。
左右2枚の薄い膜からなる声帯は、閉じたり開いたりすることで肺につながっている気管の蓋をする役割を担っています。
さらに声帯がぴったり閉じた状態のところを呼気が通過すると、膜が細かく振動して声になります。※呼気とは•・・鼻や口から吐く息のこと
ただ、声を出すための筋肉が弱ってくると2枚の膜がぴったり閉じず、声にハリがなくなり「かすれ声」の原因になってしまうのです。
それでは自分の声帯の調子がどうなのか、簡単なテストで判断してみましょう。
まずは家庭などリラックスした環境で椅子に座ります。
息を大きく吸い込み、普段の会話くらいの大きさで「あー」となるべく長く声を出します。
一息でどれだけ続くか確かめてみてください。
ポイントは声を出し続けられる時間です。
声帯が衰えると声帯に隙間ができるので、声を出した時に余計な空気が漏れ出てしまい短い時間しか発声できなくなってしまいます。
■健康を脅かす声帯の萎縮
専門家は「声帯の萎縮は健康を脅かす」と警鐘をならしています。
声帯は飲み込んだ食べ物が気管に入らないように跳ね返し、食べ物を食道に送る役割を担っています。
しかし声帯が萎縮すると、隙間があいたり食べ物を跳ね返すことができず異物が肺に入ってしまい、肺炎につながるリスクが高まります。
さらに肺に息を溜め込むことができなくなるため、瞬間的に力むことが難しくなります。
全身に力を入れて踏ん張ることができなくなるほか、歩く時や立ち上がる時に力が入らず転倒につながることもあります。
また、痛みはないのに放っておくと破裂し、多くは死に至ってしまう恐ろしい病気である大動脈瘤にも、特徴的なサインとして声のかすれが多く起きています。
破裂前の胸部大動脈瘤にはほとんど自覚症状はないとされていますが、こぶができた2~3割の人に「声のかすれ」がみられたのです。
これは声帯をコントロールする反回神経が大動脈瘤で圧迫され麻痺してしまうことが原因になっています。
この他にも、甲状腺がん、肺がん、食道がんなどの喉の周りのがんは、どれも反回神経に絡んでいるので声のかすれが症状として発現することが多くあります。
このように思いがけない病が隠れている可能性のある声の変調ですが、多くは風邪や声の出しすぎ、また老化による声帯の衰えがほとんどのため、気にする人は多くありません。
しかし、声にかすれがみられ3週間~1ヶ月治らないような場合「耳鼻咽喉科を受診してほしい」と専門家は呼びかけています。
人間の体は3週間程度で組織が再生されるため、治らない場合は老化を除けば「組織が冒されている」「何かができている」「何かがなくなっている」可能性が高いといえます。
命の危険を知らせる声の不調を放置せず、少しでも気になれば早めに医療機関を受診するのが良いでしょう。
■声帯トレーニングで誤嚥を防ぐ
肺炎による死亡率は年齢を重ねるほど増えていき、60代では第5位、70代では第4位、90代では第2位と、年齢ときれいに相関しているのが分かります。
肺炎といっても様々な種類の肺炎がありますが、75歳以上の肺炎の約9割が誤嚥性肺炎であったと報告されています。
つまり高齢者の肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎だと考えられ、声帯の衰えがそのリスクを押し上げていることになります。
専門家は誤嚥を防ぐために「体に力を入れたり抜いたりする運動を繰り返し、力を入れる瞬間に短く声を発する」という声帯やその周りの筋肉を鍛えるトレーニングを推奨しています。
簡単なトレーニングですが、1ヶ月間続けた患者のうち9割以上に誤嚥症状の改善がみられたといいます。
短時間で終わるトレーニングなので、誤嚥を防ぐためにもぜひおすすめです。
■声からのサインをしっかり聞きましょう
日頃あまり気にすることは少ないですが、喉は生きていく上でとても大切な臓器です。
しかし使わないと衰えていってしまう為、高齢で独居になったり外出が減ったりするとさらに萎縮を招いてしまいます。
なにより大切なのは、喉をしっかり使うことです。
カラオケや友人とのおしゃべりなど、誰かと楽しみながらハリのある声を出すよう意識すると、それも立派な声帯トレーニングになるでしょう。
また、声の変調は本人が自覚していなくても、周りの人が気づきやすい異常でもあります。
自分で意識することはもちろんですが、家族や友人など周囲の人も一緒になって声に隠れた身体のサインを聞き逃さないようにしていきましょう。
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