2018年6月に民法の相続に関する規定(相続法)が改正された話は6月26日のコラム「配偶者居住権の創設」でお話しましたが、この「配偶者居住権」と一緒にできた制度「特別寄与料」について今回はお話したいと思います。
◆「寄与」とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遺産相続が起こったら、法定相続人が法定相続分に応じて遺産分割をすることが原則ですが、法定相続人の中に遺産の維持や増加に対して特別に貢献した人がいた場合、単純に遺産分割をしてしまうとかえって不公平になってしまうことがあります。
そこで法律は相続人の貢献度に応じて本来の相続分に上乗せして取得する権利を「寄与分」として民法で定め、相続人間の公平性をはかっています。
では、具体的にどのような場合に寄与分が認められるのでしょうか。
寄与分が認められる要件と寄与行為のタイプを確認していきましょう。
①「共同相続人」であること
寄与者は共同相続人である必要があります。
そもそも相続人になっていない兄弟姉妹や第三者はいくら財産形成に寄与しても寄与分は認められません。
ただし、相続人である長男の配偶者が長年被相続人を献身的に介護した場合には、その寄与を相続人自身(長男)によるものとみて寄与分が認められることがあります。
※共同相続人とは…法定相続人が複数名いる場合、共同相続人となります。
②「特別の寄与」があること
寄与が「特別」なものである必要があります。
特別の寄与とは、被相続人と相続人の身分関係から期待される範囲を超えた貢献があることが必要です。
例えば、子どもが親を介護していたとしても、通常の親子関係から当然行うべきと考えられる介護内容の場合には寄与分は認められません。
長期的に専従的かつ献身的に介護を続け結婚もせず仕事もできなかったという場合には、寄与分が認められるでしょう。
③相続財産が「維持・増加」したこと
さらに、相続財産が維持増加したことが必要です。
いくら被相続人のために献身的に何かを行ったとしても、それが単なる精神的な応援などであって、財産形成と無関係なら寄与は認められません。
具体的な財産的利益を導いた時のみ、寄与分が認められます。
④「因果関係」
また、寄与関係と財産の維持増加との因果関係も必要になります。
寄与に見えるような行為があり財産が増加していても、その寄与と財産増加が無関係であれば寄与分は認められません。
以上の中からいくつかの要件を満たすことによって、冒頭でお話した「特別寄与料」を受け取ることができます。
ではいったいいくら請求ができるのでしょうか。
次は寄与分の評価についてお話します。
◆寄与分の評価方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
上記の表にあるA〜Eの各タイプによって評価方法が異なります。
今回は介護に関する「療養看護型」の評価方法をご紹介します。
※その他の評価方法はこちらをご覧ください。
「療養看護型」の寄与分評価では、実際に看護をしていたのか、介護士の費用負担をしたのかによって計算が異なります。
実際に療養看護した場合には、以下のような計算式になります。
「1日あたりの介護士費用の相場」…介護保険制度の「介護報酬基準額」に基づく「療養看護報酬額(日当)」
※実際に介護士の費用負担した場合は、支出した実費で評価します。
「療養介護日数」…「要介護2」の介護状態となった時点からの期間。
※ただし、「要介護2」以下の状態や入院、介護施設に入った場合は、日数に含まれない。
「裁量割合」…家裁がケースに応じて判断する割合のことです。実務上は、0.7を基準として0.5から0.8の間で調整していると考えられています。
では「1日あたりの介護士費用の相場」が8,000円で「療養介護日数」が500日だった場合の寄与分がいくらになるのか見てみましょう。
裁量的割合を基準の0.7として計算したところ、寄与分は280万円となります。
こちらの数字を見てもわかるように、寄与分は認められたとしても数百万円。相続財産が少なければ受け取りは難しく慎重に考えなければ相続争いに発展しかねません。
◆「争族」にならないためには・・・・・・・・・・・・・・
一生懸命介護をした貢献度が対価として現れることは、これから介護する側にも介護される側にもいいお話です。
しかし、慎重に対応しなければ新たな相続争いの火種にもなってしまいます。
遺産相続は自分たちには関係ないと思われている方もいると思いますが、トラブルの多くは遺産総額が5,000万円以下の一般家庭で起こっています。
ではどう対処していけばいいでしょうか。
トラブルを未然に防ぐための一つとして、生前に内容をきちんと配慮した有効な遺言書を作成しておくことがとても効果的です。
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