子どもの教育費や住宅取得資金の準備などに追われる30代・40代にとって、父母や祖父母からの資金援助、いわゆる「贈与」は大きな助けになります。
しかし、そこでネックになってくるのが贈与税です。
「贈与」という言葉は送る側の行動を指しますが、「贈与税」は利益を受け取る側に課されます。
つまり渡し方によっては、「子や孫に税負担まで一緒に送ってしまった」ということに…。
このような事態を避けつつ、結婚・教育・住宅など、多額の支出が見込まれる子世代・孫世代を金銭的に上手にサポートしていくためには、贈与税への理解を深めておくことが大切です。
特に近年は贈与を検討する人にとって、有効な制度がいろいろと増えています。
どのような制度があるのか、その活用ポイントや注意点など、子や孫に負担をかけず、賢く贈与できる方法を紹介していきたいと思います。
贈与の基礎知識
贈与とは、贈与者が生きているときにその財産を無償で相手に与えることを言います。
生前に行われるので「生前贈与」とも呼ばれます。
平成27年に税制が改正されたことで、亡くなったあとに財産を譲る「相続」よりも、「生前贈与」の方が財産に課せられる税金が抑えられるケースが増えています。
また、生前贈与ができる間柄は改正前は親子だけでしたが、孫やひ孫への贈与も認められるようになりました。
これにより、孫の結婚やひ孫の誕生を意識して贈与するシニアも増えているようです。
場合によっては相続するより節税になったり、譲りたい相手に確実に財産を譲れること、また贈与した財産の使い道を見届けることができるなど、亡くなったあとに行われる「相続」にはないメリットがたくさんあり注目を集めていますが、一つ気を付けなければならないポイントがあります。
それが、あげる人の意思表示だけでは贈与にならず、必ずもらう人の「もらいます」という返事が必要になってくる点です。
例えば、1歳の子どもに「お金をあげる」といってお金をあげたとしても、子どもには「お金をもらう」という意思表示はできないため、これは贈与にはなりません。
親が子ども名義の銀行口座を勝手に作り、そこに少しずつ預金を移していたという例もありますが、これももらう側の子どもは何も知りませんので贈与にはならないのです。
基本的に贈与は贈与者が「あげます」という意思表示をし、さらに受贈者が「もらいます」と意思表示をすることでしか成立しません。
ただし、親や祖父母の扶養下にある家族に対して支払った生活費や学費には、当然ですが贈与税はかかりません。
親や祖父母には子どもや孫を扶養する義務があるため、その義務を果たすための出費には贈与税はかからないことになっています。
ただし、生活費として渡すにはあまりに金額が大きいものに関しては、贈与税が発生するケースがあるので注意が必要です。
さて、ここで疑問になってくるのが意思表示ができない未成年や未就学児には必要なもの以外の贈与はできないのか?という点です。
結論からいうと、贈与に年齢制限はありませんので0歳児でも贈与を受けることは可能です。
ただし未成年者が贈与を受ける場合には親権者の同意が必要です。
この際、贈与があった事実を客観的に証明するために「贈与契約書」を作成しておくと良いでしょう。
口頭でも贈与契約は成立しますが、契約書面があった方が贈与の証明が容易になり、将来税務署から贈与の事実を否認されにくくなります。
また未成年者に贈与がなされた場合、親権者がその財産管理を行うことが多いですが、財産の使い込みは贈与の事実を否定することにもなるので、安易な使用は避けるようにしましょう。
非課税の贈与を賢く使おう
財産を贈与されると、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った合計額に対して、原則贈与税がかかります。
ただ、すべての贈与が課税対象になるわけではありません。
ここから非課税になる贈与をみていきましょう。
贈与で相続争いを回避
贈与する相手が選べる生前贈与は、相続時に生じるトラブルを未然に回避することにも繋がります。
通常、自分名義の現金や土地などの財産は、自分の死後法律に沿って配偶者や血縁者に相続されます。
しかし遺書がなかった場合はもちろん、ちゃんと遺書を作成しておいても相続争いが起こってしまうケースは少なくないでしょう。
また、子どもや配偶者がいる場合は孫に相続権はありませんが、事情があって「孫に必ず遺産を相続させたい」など、通常なら相続権がない人に財産を贈与したいという人もいるかもしれません。
そのような場合、生前贈与であれば確実に希望する相手に遺産を相続させられることが可能になり、被相続人の意思をより尊重できます。
生きているうちに自分の意思で財産を分配できれば、相続争いが起こるリスクを大きく減らせるでしょう。
節税をしながら、身内での相続争いを避ける。それを可能にするのが「贈与」ですが、そのメリットを最大限に生かすためには正しい知識をもつことが必要です。
もらい方や渡し方によっては、逆にデメリットの方が大きくなってしまった…ということもあり得るのです。
そこで次回は、贈与を上手に利用するための注意点をまとめていきたいと思います。
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