【終活】増える高齢者の危険運転。家族はどう対処する?②

前回は、年々増加傾向にある高齢者が関わる交通事故の現状と、家族で高齢者の運転チェックをすることで、危険運転をしていないか自覚を持ってもらうお話をしました。

しかし、それでも自分の運転技術に大きな自信を持っていたり、運転に生きがいや喜びを感じている高齢者に卒業を促すことが難しい場合もあります。
こうした家族だけでは解決できない時、どうすれば良いのでしょうか。

今回は認知症などによる交通事故を防ぐために家族ができることや、悩んでいる家族に寄り添う相談窓口についてご紹介します。

認知症かも、と心配になったら…。家族でできる高齢者のケア。

高齢者ドライバーを家族に持つ方の多くは、危険運転が認知症の影響なのではと不安を感じていると思います。
そんな家族の不安を解消するために、国立長寿医療研究センターが制作した「認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者のための支援マニュアル」を元に、高齢者家族が「認知症かも」と心配になった場合の対応をご紹介します。

大事な3つの対応
●本人(運転者)の安全確保
運転が危険だと感じた場合は、認知症であるかどうかにかかわらず止めるよう促しましょう。

●正確な診断・病気の理解
できるだけ早く医療機関を受診し、正確な診断を受けましょう。

●本人にとっての「運転の意味」の理解
日常生活に車の運転がかかせないのであれば、代わりとなる運転手段や支援をしてくれるサービスを探しましょう。
また、運転に生きがいや楽しみを持っている方には、別の楽しみや生きがいを一緒に探してあげましょう。

運転中止後の2つの対応
●本人が忘れてしまうことを防ぐ
主治医に「運転中止」について文書を作成してもらい、自宅の目につくところに貼っておきましょう。

●本人の努力と判断に対し、言葉をかけてねぎらいましょう。

始めに認知症のうたがいがある際は、医療機関を受診し高齢者の状態を知ることが大切です。
2017年3月には、75歳以上の高齢者は3年に1度の免許更新の時に記憶力や判断力をチェックする認知機能検査を受けることが法律で定められました。
今までは「認知症のおそれ」となっていてもそのまま免許の更新ができましたが、現在はきちんとした医師の診断が必要となり、認知症と診断されれば免許の取消か停止の対象となります。

しかし中には、前回のコラムでも取り上げたように、運転がいきがい・楽しみ・自立の証と思っている人もいるため、診断により免許を取消・停止された高齢者が家に引きこもってしまう場合もあります。
そんな時は、家族や周囲のサポートがあると良いでしょう。
趣味の講座やサロン、家庭菜園、デイサービスなど、地域で別の生きがいを一緒に探すことが大切です。

そしてもう一つ大切なのは、今までの感謝の想いをきちんと伝えることです。
今まで送り迎えなど車の運転で人の役に立っていた分、運転を止めると気持ちが落ち込む場合があります。
そこで、「これまでありがとう」「これからは代わりに運転するよ」とねぎらいの言葉をかけてあげましょう。
そうすることで、車から離れた人生のセカンドステージをポジティブな気持ちで迎えることができるのです。

抱え込まないで相談を。警察署に存在する相談窓口。

ただ、家族だけでは説得できない場合もあります。
その際には抱え込まず、第三者に相談をしてみることをオススメします。

全国の警察には、老化によって車などの安全な運転に不安を感じている高齢者ドライバーやその家族が相談することができる「運転適正相談窓口」があります。
通常は担当職員が対応にあたり、助言や指導、運転免許の自主返納を促したりしていますが、最近では看護師が対応している所も増加しています。

相談内容には認知症に関することが多く、しかも高齢者の家族からの相談が多いため、警察職員のみでは物忘れか認知症かの判断が難しいことから看護師による対応が広がっているのです。

その一例として、熊本県運転免許センターでは、2015年に全国に先駆けて看護職を窓口に配置しました。
その免許センターに在住する看護師は、「相談に来た高齢者の話に耳を傾け、免許を返納しろと頭ごなしに言わず、返せば家族が安心すると本人が納得するまで説得をします。」と話します。
「一人ひとりに様々な事情があって、何年も培った思いがある。家族と連携しながら、支援の方法を今後も考えて行きます。」と高齢者や家族の気持ちに寄り添いながら、医師への受診や免許の自主返納を促しています。

この取り組みが効果を発揮し、熊本県内の2015年の免許返納件数は、配置前の2014年から4割近く増えた3千件弱となりました。
熊本県に続くカタチで、2015年12月には鳥取県、2016年には宮崎県も免許センターに看護師を配置するなど、他県でも活動が広がりを見せています。

誰もがいつかは運転から卒業する。

老化によっていつもできていたことができなくなってしまうのは、誰にでもおとずれることです。
それを自分で受け止め、家族や周りに迷惑がかからないようにするために、今できることから始めていくことが大切です。
まずは少しの判断ミスで大きな事故になりかねない運転から見直し、家族と今後の運転について話し合いましょう。

運転に限らず、より良い終活ライフを送るためにも、家族の支えは様々なカタチで必要となります。
運転のミスは悲劇を生むだけです。
一度じっくり運転について、家族と話し合いましょう。

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