【終活】地域の力で介護抑制①

2017年4月から始まった介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」)。
今までは介護士やヘルパーが行ってきた介護予防や生活支援サービスの一部を、
市区町村が中心になって取り組んでいこうというものです。

地域住民や企業の力を活用することで介護費を抑制しながら高齢者を支えていく狙いですが、
地域によっては必要なサービスが削られてしまうという深刻な状況も生まれています。

総合事業はこれからの日本の介護にどのような影響をもたらすのでしょうか?
終活をはじめようと思ったり、
すでに終活を行っている方々にとって、
介護に関する情報はどんなことでも知っていて損はありません。

現場の実情から、総合事業のメリット・デメリットを考えていきたいと思います。

地域力で高齢者を支える「総合事業」

総合事業は2017年4月から、すべての市区町村で始まった新しい介護事業です。

介護保険で比較的軽度とされる「要支援1・2」の人を対象にしていた訪問介護と通所介護を保険給付から外し、
代わりに市区町村がサービスを提供していく
というもので、
これまで介護士やヘルパーなどが行ってきた生活支援などを、
各地域のNPOや民間企業が代行します。

どのようなサービスを提供していくのかは、
市区町村が地域の実情に応じて独自に決定できるので、

その内容や料金は自治体ごとに異なったものになると思われますが、
NPO・民間企業・ボランティアなど多様な事業主体が参入することで、
様々なサービスが実現されることが期待できます。

また、このサービスは「要支援1・2」だけでなく要介護認定を受けていない人でも、
65歳以上になって生活機能の低下があると判断された場合は利用できるしくみです。
要介護に進行しないよう介護の予防策としても有効なので、
介護費用の抑制にもつながっていくでしょう。

このように、地域の力を結集し、
高齢者ができるだけ介護保険に頼らず自立した生活を送れる社会を目指すのが、
総合事業なのです。

高齢者 はつらつ!その最前線

長野県御代田町、ここは地域住民が高齢者の介護予防に積極的に取り組み介護費の削減に成功するなど、
いま高齢者が元気な町のひとつです。

軽井沢町に隣接する御代田町は人口1万5000人で高齢化率は全国平均並みですが、
06年~08年の介護保険料は県内で2番目に高く、高齢者の自立が課題の町でした。

そこで御代田町は07年に就任した町長を中心に、
介護予防拠点となる世代間交流センターを複数箇所整備したり、
サポーター養成講座を開き、
卒業生で介護予防を担う「はつらつサポーター」を結成するなど、
高齢者のケアプランづくりに着手。
こうした蓄積を基に、15年4月県内の先頭を切って総合事業をスタートさせました。

「御代田町はつらつサポーター」が毎月1回2時間開く介護予防教室では、
高齢者の元気な笑顔が溢れ活気に満ちています。
サポーターが開発した健康運動やストレッチ体操で身体や記憶の訓練を行うのですが、
足腰が弱った高齢者には大きな効果をもたらしているようです。

町内の72歳の男性は教室に通い始めて3年になります。
交通事故後、家で一人で療養するうち状態が一時「要介護4」にまで悪化してしまいましたが、
この介護予防教室に参加するうちに「要支援1」にまで回復。
「体操で足が上がり、歌も自然にでるようになって日常生活が楽しい」と話します。

こうした御代田町の取り組みで、
要支援・要介護の認定率は06年3月の15.31%(全国812位)から
16年10月には11.43%(同21位)にまで低下し、
介護保険料も県内2位から39位に下がりました。

更に介護給付費の伸び率が全国平均並みに伸びた場合と比較して
15年度では町の負担額が1400万円も減少したのです。

地域独自の支援サービスも

「介護予防」のほかに、
総合事業のもう一つの大きな目的になっているのが「生活支援」です。

これは介護資格を持っていなくても、
市区町村の定めた研修を受ければ掃除や買い物、
さらには除雪作業などの家事支援を行えるというもの。
NPO・ボランティア団体・民間企業など、
地域住民によるサービス提供が可能になるため、
地域活力の向上にもつながるのではないかと期待されています。

大阪大東市、この町でも総合事業による地域住民の活動が活発に行われています。
74歳の生活サポーターの男性は、
30分250円の料金を利用者から受け取り掃除や買い物を行っています。
さらに今までの介護保険では保険対象外のため行えなかった、
庭の手入れやペットの散歩など、
多種多様な要望にも柔軟に応え利用者の生活を支えています。

「家ではめったにしないが自分で時間の設定ができ、
さらに利用者の喜んだ顔を見れるのがうれしい」と
話すこの男性は、週に2日、30分から1時間程度生活サポータを務めています。

この地域ではこうした生活サポーターを増やすために、
「時間貯金」というユニークな制度を設けています。

生活サポーターとして活動した時間をカウントしておき、
将来自分が支援される立場になったときには
その時間分を優先して生活サポーターに来てもらえるというシステムです。
時間貯金をするサポーターは
「今は元気だが、そのうち自分がサポートしてもらうようになったときの保険のようなもの」
と考えています。

いま介護の現場は慢性的な人手不足です。
そこに地域住民が加わることにより、介護保険ではカバーできない手厚いサービスで
高齢者を支えていくことができる
とされています。

地域が支える独自の生活支援サービス


移送支援(1キロメートル 200円など)
NPO、民間企業、社会福祉団体
ゴミ出し支援(1袋 100円)
シルバー人材センター
身近な生活支援(1時間 800円など)
生協、民間企業、NPO
除雪支援(1時間 1,500円)
シルバー人材センター、NPO
出典:2017年2月27日 日経新聞

市区町村を中心に高齢者を支えていくこの取り組みは、
要介護者やそのお世話をする家族にもうれしい話ですが、
メリットにはデメリットがつきものです。
総合事業がスタートして、新しい問題が浮上してきています。

次回の記事では、その問題について取り上げたいと思います。

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