これまで、高齢者の長寿化や、元気なシニアが増えているというお話をさせていただきました。
その記事の中で、
40歳以上の男女1600人を対象に行った「何歳まで働きたいですか?」というアンケートでは、
「働けるうちはいつまでも働きたい」という回答が最も多いという結果になりました。
長く働くことで、収入を得続けることができるのはもちろんですが、
それ意外にもメリットがあることをご存知でしょうか。
今回は、働く高齢者へのメリットを見ていきましょう。
定年を過ぎても働く高齢者が増加
まずは、65歳以上で働いている高齢者の数はどのくらいいるのでしょうか。
これまでは60歳で定年退職し、老後の生活を送る方が多いと考えられていました。
しかし、2015年に総務省が公開したデータを見ると、
65歳以上の高齢者の就業者数は12年連続で増え続けているのです。
2015年では65歳以上で働いている高齢者の数は「730万人」と、
過去最多の人数となりました。
2015年の高齢者の就業率は21.7%と、高齢者の5人に1人が働いている状況です。
そんな中、定年以降も働くことにより通常65歳からもらえる年金の受給を遅らせることで、
年金額が増え財政の安定が増すのではという考えが出てきました。
その理由には、今の年金制度が関わっています。
年金の支払い方式には2つ種類があります。
現役世代が将来の自分のためにコツコツとお金を積み立て、
その積み立て金額によって老後に受け取る年金の金額が変わる「積立方式」。
もう1つが、現役世代の人たちが支払った保険料を現在の年金受給者に渡す「仕送り方式」です。
今の年金制度は、この「仕送り方式」を仕組みとしています。
しかし、少子高齢化が進んでいるため、仕送りをする現役世代の人数が急速に減り、
仕送りを受ける側の人数が急速に増えています。
なので、今度は受給者であった高齢者が働き手に回ることで、
年金額が増えて財政の安定も増すと考えられているのです。
これを受けて、その年金制度を見直す案が出て来ています。
厚生労働省が2014年に発表した年金財政検証で、
最長で40年間となっている保険料の納付期間を延ばして、
支給開始年齢も引き上げた時の年金額を試算しています。
現役世代の所得のどのくらいをカバーするかを示す「所得代替率」を、
14年の時点で50.6%にまで引き下げないと、年金の財政は安定しません。
そこで政府は公的年金の支給額を決める際、年金に加入する現役世代の減少や、
受給者の長寿命化などを反映させるマクロ経済スライドなどを導入しました。
これにより、保険料を納める期間を5年間延ばし支給開始を65歳まで上げると、
所得代替率が57.1%となり、財政が安定するようになります。
さらにある人が70歳まで働いて、保険料を50年納め、支給開始を70歳まで自主的に繰り上げると、
所得代替率が85.4%まで高まることになります。
このように、長く働いて保険料を納めることによって年金額が増えるのです。
つまり、保険料を納める働き手が増えたり、受け取っていた高齢者側が働き手に回ったりすることで、
貰える年金額が増えていくということなのです。
2020年以降は人生100年の時代?変わる社会保障
政界でも、年金制度の線引きを変える議論が広がっています。
2016年の10月に、
自民党の小泉進次郎氏らが「人生100年時代の社会保障へ」と題した提言を発表しました。
「20年学び、40年働き、20年の老後を過ごす」ことを前提に設計された今の労働法制や、
社会保障制度は今後維持出来なくなるとされています。
そこで、新たな社会保障制度では、
いかなる雇用形態であっても企業に働く人が全員加入できる「勤労者皆社会保険制度」の創設や、
働く高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度の廃止、
年金の受給開始年齢を選べる年金制度への転換なども含まれており、
まさに先ほど記述したように、長く働けば年金額が増えるようになるかもしれないのです。
少子高齢化・長寿社会で暮らす現役世代や高齢者にとっては、
政治に大きな期待を寄せる提言となりました。
まとめ
少子高齢化、長寿化により、定年を越えても働く高齢者が増えています。
その働く高齢者を支えるべく、政界も動き始めています。
もちろん健康状態を一番に考慮しつつ、
60歳を過ぎた終活世代である高齢者が、これまでと変わらずイキイキと働ける環境を、
制度だけでなく現役世代も一緒につくっていくことが大切です。
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