【終活】増え続ける介護給付費…その実態とは?

年老いた親は家族で面倒を見るのが当然と思われていた時代から、
社会全体で高齢者を支えようという時代に変わり、2000年度に生まれたのが介護保険です。
そのおかげで、要介護認定度が低くても受けられるサービスや保険が増えています。
こうして介護の社会化は進んできましたが、
今、財政的な限界が見え始めているようです。
それはなぜなのか、その背景を追いました。

要介護認定の基準

まず、要介護認定について改めて見ていきましょう。
要介護認定とは、”介護が必要な必要量”を示す尺度のことを言います。
どのくらいの介護サービスを行う必要性があるのかを、7段階にわけて判断します。

要支援1 生活の中で身の回りの世話の一部に手助けが必要な状態。

掃除など、立ち上がり時になんらかの支えを必要とする時がある。

排泄や食事はほとんど自分でできる、など。

要支援2 要支援1の状態から能力が低下し、日常生活で何らかの支援または部分的な介護が必要となる状態、など。
要介護1 ・みだしなみや掃除などの身の回りの世話に手助けが必要な状態。

立ち上がり、歩行、移動の動作に支えが必要となるときがある。

・排泄や食事はほとんど自分でできるが、問題行動や理解の低下が

みられることがある、など。

・日用生活はほとんど1人でできる。

要介護2 ・みだしなみや掃除等、身の回りの世話の全般に助けが必要な状態。

立ち上がりや歩行、移動になんらかの支えが必要。

・排泄や食事に見守りや手助けが必要なときがあり、問題行動や理解の低下がみられることがある、など。

・日常生活の中の動作に、部分的に介護が必要。

要介護3 ・みだしなみや掃除等身の回りの世話、立ち上がりなどの動作が1人でできない状

態。歩行や移動など、1人でできないことがある。

・排泄が自分でできない。いくつかの問題行動や理解の低下がみられることがある、

など。

・日常生活の動作の中で、ほぼ全面的に介護が必要。

要介護4 ・みだしなみや掃除など、立ち上がり、歩行などがほとんどできない状態。

・排泄がほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下が見られることがある、など。

・介護なしでは日常生活が困難。

要介護5 ・みだしなみや掃除など、立ち上がり、歩行や排泄、食事がほとどできない状態。

・多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。ほとんど寝たきりの状態に近い、など。

・介護なしでは日常生活が送れない

 

要支援1、2は「生活機能が低下し、その改善の可能性が高いと見込まれる状態」の事を言います。
この要支援は維持介護予防サービスにより、
身体機能の維持や高齢化を緩やかにすることを目指します。
一方要介護は、「現在、介護サービスが必要である状態」で、
数字が大きくなるほど、より介護が必要であることを示しています。

元々、要介護1では介護サービスを受けるには早い段階だとされていましたが、
以前の記事、「仕事と介護の両立…増える要介護者に、社会はどう動くのか」でも話題に挙げたように、
要介護1でも受けられる制度や保険商品が拡充されてきています。

こうした要介護1でも介護サービスなど受けられることは、
介護者の負担が大幅に減ることに繋がるので良いことです。
しかし、こうした認定の範囲が広がれば広がるほど要介護認定を受ける人は増え、
それに並行して介護給付費も増加しているのです。

増加し続ける介護給付費

介護給付費とは、1年間にかかった介護サービスの保険料支払い額のことをいいます。
簡単に言えば、介護をするために払っているお金です。
この介護給付費が今、超高齢化社会を表すかのように増加の一途をたどっているのです。

2016年度に厚生労働省から発表された「介護給付費等実態調査」によると、
介護保険制度が始まった2000年では、年間3兆2427億円だった給付費が、
2016年には年間9兆6,924億円となり、過去最高の値になりました。

これが私たちにどういった影響を与えているのかというと、
そもそも介護保険は国民全員が40歳になった月から加入して保険料を支払い、
介護が必要な要介護者が、介護サービスを受けられるように支える仕組みで、
保険制度の半分がこの40歳以上の国民によって成り立っています。
そしてそのもう半分は税金が投入されているのです。
結果、給付費が増加すると、私たち国民の税の負担が重くなっていくのです。

給付費が増加した理由については、
年齢が上がるにつれて一人当たりの介護費が増加していることが挙げられます。
さらに、年齢が80歳を越えたあたりから介護費用が上がります。
それを裏付けるデータを厚生労働省が発表しています。

年間の介護費用が65〜69歳では3.5万円。それほどかからないように思うかもしれませんが、
75〜79歳では17.1万円。
85〜89歳では79.9万円。
90歳超に関しては153.9万円になっています。

この結果を見て分かるように、年齢を重ねるごとに一人当たりの介護費用が増加しています。
しかしそれは、人間歳を取れば取るほど体が思い通りに動かなくなるのは自然なことで、
介護費用が高くなってしまうのも自然な流れなのです。

では、今の私たちには何ができるのでしょうか。
そこで求められるのは、介護が必要な状態にならないように予防をすることであり、
周りの人たちが地域で高齢者を支える「地域福祉」という考え方です。

地域社会で支える高齢者

地域福祉とは、住民や自治体、様々な組織が協力し合いながら
地域の課題を解決する活動全般のことを指します。
この地域福祉は「助けたり助けられたり」「おたがいさま」という、
前回の記事でもお話しした、「共助」の関係を構築することになります。
高齢者を家族だけではなく、地域で支えて行くことが高齢者や介護者の心の支えになり、
高齢者の身体能力の低下や認知症などの症状悪化を抑えることで、
介護費用を減らすことにつながるのです。

まとめ

超高齢化により、40歳以下の人口と日本人口全体における割合が逆ピラミッドになっています。
今後も人口増加、少子高齢化は進んで行くことでしょう。
そんな中で現役世代にできることは、少しでも経済を良くして行こうと前を向くこと。
終活世代の高齢者ができることは、地域とのコミュニケーションを活発にして人との繋がりを強めること。
超高齢化社会ではなく、超長寿化社会としてポジティブに受け止め、
希望を持って人生を生きていくことが大切です。

【関連リンク】
仕事と介護の両立…増える要介護者に、社会はどう動くのか
行政では支えきれない?重要視される人と人との支え合い

 


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