東京オリンピックの開催に向けて外国人観光客の増加が見込まれていますが、都心などではホテル不足が深刻となっています。
2020年までに、訪日外国人の数は現在の2倍にあたる4000万人に増えるという政府の見通しもあり、
その場合、東京都内では1880万人分の宿泊施設が不足してしまいます。
こうした状況の中、注目を集めているのが訪日外国人を自宅の空き部屋などに泊める民泊です。
見ず知らずの外国人を自宅に泊めること自体、敷居が高いように感じますが、なんとシニア層による民泊がじわじわ増えているというのです。
なぜ、いまシニアホストが増えているのか?
今回は、シニアの民泊運営について考えてみましょう。
シニアに広がるホスト熱
世界大手の民泊仲介業者であるAirbnb(エアビーアンドビー)が、日本を含む40カ国で実施したホストに関する調査で、日本は年齢の高いシニア層ホストの増加率が高いことが分かりました。
なかでも60歳以上のシニア層は前年比235%の約900人。グラフから見ても分かる通り、すべての年代の中で一番の増加率を見せています。
現在日本国内の65歳以上の高齢者人口は3384万人で、総人口に占める割合は26.7%です。
高齢化社会で高齢者が増えていく日本での調査のため、シニアホストが多くなっている…という調査結果は
当たり前ではあるのですが、外国人観光客を受け入れるためには言葉の問題があったり、
どんなゲストが来るか分からない…などの不安要素も多く、高いハードルがあるのは事実です。
それでもシニアが民泊運営を始めるのはどうしてなのでしょう。
自宅で異文化交流
Airbnb(エアビーアンドビー)は、ゲストから高い評価を受けている国内のスーパーホスト(258人)の意識調査を行い、民泊の理由を尋ねました。
その結果異文化交流が73%、空き部屋活用が45%でした。そのうち61歳以上のシニアに限ると、異文化交流が88%、空き部屋活用が65%に跳ね上がりその関心の高さが伺えます。
名古屋市に住む67歳のA子さんは、2015年6月からゲストを受け入れてきました。
食費や洗濯代など実費程度の謝礼は受け取りますが、「目的は金銭より国際交流」と言います。
伊勢神宮を訪ねるゲストに行き方や参拝の仕方を教える一方で、相手の国の文化や歴史を教わることもあるそうですが、実は英語が話せないA子さん。
しかし「片言の単語と身ぶり手ぶりで通じる」と笑います。
今は明るいA子さんですが、ホストになる前は2階建ての家に一人で住んでおり、ふさぎ込むことも多かったそうです。
心配した長男が「気晴らしに空き部屋で民泊でもやったら」と勧めたのがきっかけだそうですが、
ホストになってからは明るさを取り戻し、2016年12月時点で約50組ものゲストを受け入れています。
また、関西在住の70代のB子さんは、「若いころ世界中を旅してきたので、70を超えてから今度は来日する外国人の方に恩返しがしたい」と、民泊を始めました。
半年間で受け入れたゲストは20組以上になり、韓国や中国、ヨーロッパからの予約が絶えないそうです。
ときにはゲストと一緒にキッチンでご飯を作ったり、天気の良い日は観光スポットを一緒に回ったりと、ゲストの滞在そのものを満喫しているB子さんは、お金を得られる以上に民泊ならではの異文化交流を楽しんでいるようです。
シニアホストならではのおもてなし
上記調査では「ゲストに必ず会うか?」というアンケートも取っていますが、「はい」と答えたのは全世代が64%だったのに対し、シニア世代は92%もの人がゲストと顔を合わせていました。
交流の形態としては「朝食」がシニアの42%を占め、主に朝食が交流の場となっているようです。
札幌市に住む63歳のC子さんも、朝食で外国人観光客と交流を深めるひとり。
これまでに雪まつり見物に来た観光客など約40組を受け入れてきましたが、民泊を始めたきっかけは「外国人に日本の食文化を伝えたいから」。
基本的に朝は、ごはん・味噌汁・卵焼き・漬物などの和食を提供するとのことで、日本ならではの慣習を熟知したシニアホストからは、きめ細かいおもてなしが受けられるとゲストからも好評なようです。
今後も増える、シニアの民泊運営
現在日本は4人に一人が高齢者という高齢化社会ですが、シニアの民泊運営はシニアが抱える3K不安(孤独不安・健康不安・経済不安)解消にも一役買っています。
外国人との会話が孤独を癒し、メリハリのある生活が健康増進につながり、そして謝礼が家計の助けになるのです。
今後も需要が増えていくであろう民泊は、シニアの新しいライフスタイルとして定着するのかもしれません。
終活=ネガティブという考えは間違いです。人生の終盤だからこそ、これまでの経験を活かしてより人生を楽しむ。ついでに周りに迷惑を掛けないように身辺整理でもしておこう、そんな発想が大切です。
今回取り上げたシニア層による民泊は、人生経験で培われたきめ細かなおもてなし精神や、長年その街に住んでいるからこそ知り得る情報など、シニアならではの長所が活かせる理想的な終活ではないでしょうか。
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