国民の2人に1人は発症してしまうと言われているがん。
日本人の死因第1位になっていますが、
医療の進歩により日々その生存率は改善されています。
がんはかつて不治の病とされていましたが、
ここ最近は治療可能な病気になってきているのです。
そこで今回は年々向上しているがんの生存率や、
最新の治療法などについて2回に渡って考えていきたいと思います。
■向上していく、がん5年生存率
がんと診断された人が一定期間経過したあとに生存している割合をがん生存率といい、
100%に近いほど治療で命を救える可能性が高いことをしめしています。
部位や進行度、治療法ごとに集計して治療効果の評価などに役立てているがん医療を
評価する指標のひとつですが、医療の進歩とともにこの数字は年々改善されています。
国立がん研究センターは、がん医療を専門的に行う全国のがん診療医療拠点病院などに
調査を行い、2013年1月1日~12月31日までの1年間で、
がんと診断された患者の5年後の生存率が66.4%だったと発表しました。
これは前回の調査に比べて0.3ポイント向上したことになります。
対象となったのは全国のがん拠点病院など318の施設でがんと診断された
およそ65万人で、性別でみると男性が58.2%、女性が41.8%。
診断時の年齢は70歳代がもっとも多く、70代と80代を合わせると約48%の割合でした。
医学の進歩や検診の普及などのおかげで、
生存率は1990年代後半から伸び続けています。
しかし膵臓がんなどの難知性がんは低い水準にとどまり、
今後の課題として浮き彫りになりました。
■がん治療に新しい選択肢
このように治る病気になりつつあるがんですが、その治療は「手術」「放射線」「抗がん剤」の3本柱で進められていました。
これらの治療法はがんの三大治療と呼ばれ、現在でも特定の臓器にできたがんを
早期で発見し手術で取り除いたり、手術が難しい場所にできたがんには放射線を
あてるなど、がんをピンポイントで治療する局所療法はとても有効です。
他の臓器に転移するなどして広がった場合は、抗がん剤を使用して全身に薬を
行き渡らせ広い範囲でがんを攻撃します。
しかしこの抗がん剤は早期がんで手術し、その後の再発を予防するためなどに
使用するのにはとても有効なのですが、局所療法したけれど発見が遅れたために
がんが全身に広がってしまった人などが使用する場合、がんを完全になくしてしまう
効果は期待しにくくなります。
そこであらたに登場したのが
「免疫チェックポイント阻害剤」を使用した4つ目の治療法です。
免疫チェックポイント阻害剤は体内にある免疫の力を利用する抗がん剤の総称です。
免疫細胞は体内の異物を攻撃し排除しており、細胞数が少ない早期にはがん細胞も
この免疫細胞に排除されています。
しかし免疫細胞は活性化しすぎると自らを攻撃してしまう自己免疫反応を
起こしてしまうため、免疫反応を制御するスイッチも持っています。
このスイッチを「免疫チェックポイント」と呼びますが、なんとがん細胞の中には
自らの増殖のためこの免疫チェックポイントを操作し免疫反応を起こさせないよう
ブレーキをかける分子が存在するのです。
こうしたがん細胞の働きを阻止するのが「免疫チェックポイント阻害剤」です。
この薬はがん細胞がかけた免疫細胞へのブレーキを解除し、
再び攻撃のためのスイッチを入れる仕組みで働きます。
もともと持っている免疫細胞の力を発揮させ、がん細胞を消滅させていくのです。
2011年に米国が世界で初めて実用化し、国内では14年に小野薬品工業が
「オプジーボ」として販売を始めました。
現在オプジーボは皮膚がんからはじまり、肺がんや腎臓がん、リンパ腫、胃がんなどに
適用を広げ多くの患者に投与されています。
■万能ではない免疫チェックポイント阻害剤
この新たな治療法である免疫チェックポイント阻害剤を使った治療は、
末期がんでも進行を止めたり画像診断でがんが確認できなくなる、
またはそれ以上大きくならないなどの状態を長期間維持できているケースがあります。
これまで治らないとされていた患者でも、完治できる可能性も指摘されています。
しかし、残念ながらこの薬は半数以上の患者では効果がでません。
進行の早い病気であるがんに対して、効果があるのかないのか分からない薬を使用し
のんびり待つことはできませんが、早い段階で治療効果を予測できれば無駄な投薬や時間を費やすことを防げます。
そこで次回はがんの新たな治療法である、免疫チェックポイント阻害剤による治療効果の早期判定について深堀していきます。
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