足腰の衰えや、他人との接触などといった活動の機会や意欲の減少が原因で外出をせず、1日中家で過ごす「閉じこもり」の高齢者が増えています。
放置すれば寝たきりや要介護状態を招く恐れがあり高齢者の健康に悪影響をもたらしますが、そのリスクを認識している人は当事者も含め多くないのではないでしょうか?
外出頻度が少なくなるのは高齢者の生活様式とも言えるのですが、それが原因で見過ごされがちな高齢者の閉じこもり。
いつまでも明るく健康に過ごすためには、人と話をしたりメリハリのつく生活に外出はかかせません。
それでは、閉じこもり気味な高齢者に外出を促すにはどうすれば良いのでしょうか?
今回は自治体の取り組み等を基に、その対処法を探っていきたいと思います。
■閉じこもりとは?
「閉じこもり」とは、1日のほとんどを家で過ごし、週に1回も外出しないことをいいます。
行動範囲が家の中か庭に限られ、めったに家の外には出ない状態です。
閉じこもりに陥ると、外出や対人接触といった活動の機会や意欲を減少させ、生活機能や能力を下げてしまいます。
やがて起きられなくなり、寝たきりや要介護状態にまで陥ってしまうリスクもはらんでいるのです。
閉じこもりの原因はさまざまありますが、大きく分けて3つの要因に分けられます。
一つは骨折や膝痛、病気の後遺症などで身体機能が低下するといった身体的要因。
もう一つが心理的要因で、転倒に対する恐怖心や配偶者を亡くした喪失感などで外出意欲を失います。
三つ目が社会・環境要因で、近所付き合いがないことや、家の周りに坂が多いなど外出意欲を消極的にさせる環境を指します。
閉じこもりが続くと活動量が少なくなるため、心身の機能が低下し要介護状態に繋がりやすくなるのはもちろん、死亡リスクを高める要因にもなります。
東京都健康長寿センターが2018年に発表した調査によると、閉じこもっていない高齢者に比べ、閉じこもり傾向がある高齢者の方が死亡率が高いことが分かっています。
調査は2008年から14年にかけ、埼玉県和光市の65歳以上の健康な高齢者(08年当時)1023人を追跡して行われました。
2~3日に1回しか外出しない「閉じこもり傾向」と週に1回も他人と話さない「社会的孤立」に分け、死亡率を比較しました。
その結果、両方に当てはまるグループの高齢者は、両方に当てはまらない人のグループに比べると2.2倍の死亡率となり、さらに片方だけ当てはまる人のグループよりも明らかに死亡率が高くなるということが判明しました。
閉じこもり傾向は完全に閉じこもりの前段階といえます。
調査を担当した研究員は「外出しないよりはした方がいいが、外出先でどうかかわるかも重要。できるだけ人と話すなど、質の高い外出を心がけるべき」と指摘しています。
高齢者の健康維持には、社会とのつながりをキープし、他人との関わりをもつことがとても大切なのです。
■買い物・散歩を支援する自治体も
山形県天童市が2018年10月から始めた「ショッピングリハビリ事業」は、買い物をきっかけに高齢者を外出に促す新しいサービスです。
11月下旬、通所介護事業所の車で送迎された70~90代の高齢者5人が、近所のスーパーに買い物に訪れました。
介護事業所の職員も付き添っているので安心して買い物を楽しむことができ、店員との会話で孤独感も和らぎます。
Aさん(88)は1時間の散策時間で必要な食料や好きな果物を買い込みました。
「送迎があるから楽。いい気分転換になる」と満足げです。
息子に説得されて9月に運転免許を返納したばかりのBさん(88)は「車がないと買い物にも苦労するので、非常にありがたい」と話します。
この買い物サービスの対象は介護保険で要支援とされた高齢者で、9つの介護事業所と4つの商業施設から協力を得ています。
利用料は月1,410円で、天童市では15人が利用しています。
東京都板橋区の認知症高齢者等外出支援サービス事業「ごいっしょサービス」は、週に1回程度、認知症の高齢者宅にボランティアを派遣し、散歩の付き添いや話相手になってもらうというサービスです。
高齢者の外出機会を増やし、家族の休息時間を確保するのが目的です。
Cさん(56)は週1回、91歳の母親のためにこのサービスを利用します。
普段母親は自室で寝ていることが多いと言いますが、「利用を始めてから生活にメリハリがつくようになり、表情も明るくなった」と効果を認めています。
閉じこもりは病気ではないものの、さまざまな要因が絡み合っているため一筋縄ではいかない部分もあります。
しかし、寝たきりや要介護状態を引き起こす閉じこもりは、見方を変えれば最低でも週に1回外に連れ出せば悪循環から逃れられるともいえます。
今後は天童市や板橋区で実施されているようなサービスがもっと多くの自治体に広がり、サポートを必要とする人々に対して積極的な支援が十分に浸透していくことが望まれます。
■「閉じこもり」の危険性を理解する
寝たきりや要介護状態を未然に防ぐためには、閉じこもりに潜む危険性を身体・心理・社会環境の側面から総合的に理解することが大切です。
若いころより活動量が減る高齢者のライフスタイルの延長にあるのが「閉じこもり」なので、わざわざ医療機関に出向いたり地域の窓口に相談する人はいないでしょう。
「家でおとなしくしてくれて安心」と思う家族も多く、本人も含め閉じこもりのリスクを認識していない人が多いのが実情です。
しかし、さまざまな弊害を引き起こすだけでなく、死亡率まで高めてしまうのが閉じこもりです。
週に1度外出するだけでも閉じこもりの悪循環から脱出できます。
寝たきりや要介護のリスクを低減するためにも、ぜひ積極的に外に出て行き、人との交流を楽しんでいただければと思います。
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