【終活】適正飲酒でいつまでもおいしいお酒を

お酒を飲む65歳以上の男性の半数、女性の4分の1が健康を保つための「節度ある飲酒量」を超えてアルコールを摂取しています。

高齢になるとアルコールの影響を受けやすくなるため、シニアがお酒を楽しむためには節度ある飲酒がポイントになってきますが、アルコールの適正量が十分に知られていないことや、高齢者ならではのさまざまな原因がきっかけで、体に負担をかけながら多量飲酒を続けてしまう人は思っているよりも多いようです。

いつまでもお酒を楽しむためには、体力に応じた飲み方が大切になってきます。
今回は多量飲酒による危険性と、お酒も人生も長く楽しむための、上手なお酒の飲み方について考えていこうと思います。

■高齢者の多量飲酒とそのリスク

アルコールの体への影響は、年齢とともに顕著になっていきます。
高齢者は若年者に比べると体内の水分量の割合が低く、同じ量のアルコールを摂取した場合、アルコールの血中濃度が増加しやすいためです。

また、年齢とともに増加する中枢神経のアルコール感受性は、アルコールの鎮静作用や運動系への作用を強くします。
そのため高齢者は比較的少量の飲酒であっても、酩酊や転倒などの問題を起こしやすくなるのです。

しかし、お酒を飲む65歳以上の男性の半数、女性の4分の1が適正飲酒量の目安とされる「1日当たり日本酒1合」以上のアルコールを摂取していることが、厚生労働省の調査で分かりました。

高齢になると定年退職や配偶者の死など、ライフスタイルの変化や孤独感から心境に変化が生まれます。

その結果、今までより飲酒量が増えたり、昼間から一人で飲んだりなど、お酒との付き合い方がうまくいかなくなる高齢者は少なくありません。

特に独居の男性の場合、話相手もなくお酒以外の楽しみがない、身体を壊しても心配してくれる人がいない…という状況になってしまうと飲酒量が増えてしまうリスクは大きいでしょう。

また、高齢になると認知機能が低下し、自分がどのくらい飲んだのか把握できなくなるなど、飲酒の抑制がきかなくなり、気がつけばアルコール依存症になっていた…という悲しいケースもみられるのです。

国内で初めて「減酒外来」を開設した国立病院機構久里浜医療センターが行った調査によると、同センターにアルコール依存症の治療で受診する65歳以上の割合は2002年で15%だったのに対し、2012年には24%にまで上昇したことが分かりました。

高齢化が進む日本では高齢世代でのアルコール依存症が増加しており、懸念される社会問題の一つになっています。

そしてこのアルコール依存症、実は認知症を引き起こすリスクも高めてしまいます。

同センターが行った調査によると、アルコール依存症者では50代で軽度認知機能障害、60代では認知症の初期状態が認められました。

これは認知症の発症を10年も早めていることを示しており、アルコールの大量飲酒と認知症の関連性をはっきり表したものといえます。

「酒は百薬の長」と言われますが、歯止めがきかなくなったお酒にもはや「百薬の長」の意味合いはないのです。

■節度ある飲酒量とは?

月に1日以上飲酒する高齢者は約48,000人で、男性の56.4%、女性の24.9%が適正量以上を飲んでいることを上の項で紹介しました。

このうち節酒を意識していると答えた人の1日の飲酒量は、1~3合が42%、3合以上が2%と、適正量があまり理解されていませんでした。

健康づくりの目標を定めた厚労省の「健康日本21」は、「節度ある飲酒量」として、1日のアルコール量を20グラム程度としています。
これは日本酒なら1合、ビールなら500ミリリットル缶1本程度で、このくらいの量であれば程よくお酒を楽しめるとしています。

ただし明確な基準はなく、アルコール処理能力の個人差もあるので一概にいうことはできません。
一般に少量の飲酒で顔が赤くなる人や高齢者、女性はこの基準より飲酒量を減らすべきだとされています。

■適正飲酒で楽しいお酒を

「適度な飲酒」であれば、友人知人とのコミュニケーションの機会が増加したり、健康維持にも一役買ってくれるお酒。

しかし「多量飲酒」になってしまうと、健康や人間関係にも良くない影響を及ぼすことは明白です。

一般的には年齢を重ねるとアルコール代謝機能が低下し酒量も減少していくものですが、中には機能が低下しているのに気づかず、若い頃からの酒量で飲み続けている人がいます。

しかしこの状態を続けていると臓器に障害を起こしやすくなり、健康を損なってしまうリスクは増加します。

シニアになっても好きなお酒を長く楽しむためには、自分の年齢や体力に応じた飲み方を知り、適量を守って飲むことが大切です。

「自分はアルコールに強いから大丈夫」と過信せず、適量を守ってお酒と長く楽しく付き合っていただけたらと思います。

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