自分の財産を全て家族に残すのではなく、お世話になった人や応援したい団体に遺言を書いて財産を渡す「遺贈」を選択する人が増えています。
少子化で子どもがいない人やおひとり様、近年の自然災害の影響による社会貢献意識の向上、また、国庫に返納したり疎遠な親族に譲るくらいなら社会の役に立ちたいという思いが背景にあるようです。
生きた証を残し、自分らしく人生を締めくくるための「遺贈」はレガシーギフトとも呼ばれ、相続以外の財産の残し方として注目を集めています。
そこで今回は、人生最後の贈り物とも言える「遺贈」について詳しくみていきたいと思います。
■おひとり様も関心、広がる遺贈
相続人のいない人が財産の使い道を示さず死亡すると、その財産はどうなるのでしょうか?
答えは国です。
国内で相続される資産総額は年間50兆円強あるものの、誰も受け取り手がいないなどの理由で遺産が国庫納付される金額は、2016年度に約440億円となり10年間で2倍に拡大しています。
少子高齢化や未婚率の上昇が行き場のない財産を増加させている背景にありますが、そんな財産の「行き先」を決める仕組みのひとつに「遺贈」があります。
一人暮らしの70代のAさんは、妻を亡くし子どももいません。
母子家庭で育ち苦学して教師になったこともあり、Aさんは遺産を貧困で教育を受けられない世界の子どもの支援に使いたいと考えています。
数千万円の財産のうち、自分の葬儀や死後の手続きを頼むNPO法人に500万円を渡し、残りは支援団体に「遺贈する」とした遺言書を作成しています。
また、東京都内で経営コンサルトを営むBさんは、医師の妻と合計で6億円もの資産が、ありますが子どもはいません。
「自分たちは教育だけは十分に受けさせてもらったので、次代の日本が元気になるように
財産を活用してほしい」と、資産を教育分野に役立ててもらう内容の遺言信託の契約を銀行と結びました。
不動産業を営んでいたCさんは、生涯独身で子どもがいませんでした。
遺贈先に選んだのは親友が働く地元の科学館で、寄付された遺産は天体望遠鏡の購入費に充てられました。
隔週で開かれる天体観測会は、市民の間で人気を呼ぶイベントになっています。
このように、遺贈は遺言によって財産の全部や一部を特定の人に与える行為をいいます。
妻や子どもなど法律で決まった相続人が財産を引き継ぐのが相続の基本ですが、相続人以外の第三者や団体にも渡すことができます。
終活が盛んになり、自分の最後について考える人が増えたことで遺言が増加傾向にありますが、それに伴い遺贈も増えています。
全体でみると特定の個人への遺贈が多く、相続人がいても内縁や子どもの配偶者に渡す
事例もあります。
近年注目が高まっているのが、公益法人やNPO法人といった団体への遺贈寄付です。
日本財団の調査では60歳以上の5人に1人が社会貢献のための遺贈に前向きでした。
■遺贈で気を付けるポイント
多くの人に関心を持たれはじめた遺贈ですが、注意しなければならないこともあります。
せっかくの遺贈が家族とのトラブルになってしまうケースが少なくないからです。
では円満に自分の意思を実現させるためには、どのようなことに気をつければ良いのか見ていきましょう。
1.遺留分に配慮する
遺留分とは、故人が保有していた相続財産を遺言などによって相続できなくなったとき、遺留分を請求することで一定割合(多くが法定相続分の半分)の継承が相続人に保証されている制度です。
「全財産を法定相続人以外の第三者に遺贈したい」という意向があったとしても、被相続人(遺産を贈る側)に遺留分権利者(例えば配偶者や子など)がいる場合には、遺留分権利者に一定の財産を取得する権利が保障されています。
その為この遺留分に気をつける必要があり、これを侵害するような遺贈をしてしまうと後に家族とトラブルになってしまう危険があるので注意が必要です。
2.遺言書に一言添える
遺言書は、自分がなぜ資産の一部を遺贈しようと思ったのかを家族へのメッセージとして残すことができます。
これを付言事項といいますが、このメッセージがあることで故人の気持ちを知った家族が資産の遺贈に納得できたり、トラブルを未然に防ぐことに繋がります。
もし付言事項なしに遺贈してしまうと、家族はなぜ遺贈したのかと疑問を持ち、騙されているのではないかと心配してしまう可能性もあるでしょう。
残された家族は故人の希望を少しでも叶えてあげたいと思うのが通常でしょうから、自分の正直な気持ちを素直に書きしめすのがおすすめです。
リガーズサービスでは残された家族にメッセージを贈る「うたかたより」というサービスがあります。
生前に贈りたい相手に対した一言メッセージやご自身のオリジナルメッセージ、イラストなどを制作することができます。
遺言書まで作成することがないという方でも、家族に気持ちを伝える方法として「うたかたより」をご利用してみませんか。
■遺贈で財産を未来に活かす
贈る人が亡くなって初めて実行される遺贈。
一生をかけて成した財産の一部を贈る遺贈は、まさに人生の集大成としての贈り物、そして社会貢献ともいえます。
次世代の子どもたちへの支援や、災害復旧支援、また相続人ではないけれど生前お世話になった人など遺産の託し先を自分で決められる遺贈は、少子高齢化や未婚率の増加とともに今後さらに注目されていくでしょう。
去っていく社会、または未来がより良いものになるように…との願いが込められたお金には、人や社会を動かす力が秘められています。
人生最後の贈り物で自らの生きた証を残すと同時に、少しでも世の中を明るくすることができるのであれば、とても素敵なフィナーレではないでしょうか。
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エンディングノートや遺言をつくることだけが終活ではありません。
終活とは成熟した大人がこれからの人生をどのように楽しみ、次の世代に何を託すのかを決める作業です。
何かを決めるということは大変な作業ですが、
それだけにその決断は大切なヒトへのやさしさや愛情になるのではないでしょうか。
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