民法の相続のしくみが約40年ぶりに変わり、平成31年1月13日から施行されています。
今回の相続法の改正では、自筆証書遺言の作成要件の緩和や、法務局での保管制度の創設等が行われましたが、この改正により家族が亡くなったとき、あるいは自分が亡くなったときにどのような影響があるのではないでしょうか?
遺言の利用を促進し、相続をめぐる「争族」を防止する観点から緩和された自筆証書遺言の方式ですが、まだよく分からない点がたくさんあることでしょう。
そこで今回は、いよいよ施行された新相続制度について、少し掘り下げて紹介していきたいと思います。
■「財産目録」はパソコンでの作成が可能に
遺言とは、人が自分の死後その効力を発生させる目的で、あらかじめ書き残しておく意思表示です。
遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があり、いずれも民法の定める一定の方式に従って作成しなければ、法律上の効果は生じません。
従来の民法では自筆証書遺言を作成するには添付する財産目録を含め、全て自書しなければならず、財産が多数の場合や高齢者にとっては大きな負担となっていました。
そこで改正後は、財産の一覧を示す「財産目録」は自筆ではなくパソコンで作成できるようになり、遺言作成時の負担軽減が図られました。
パソコンで作成した目録や通帳のコピーなど、自筆によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになったのです。
自筆でない場合は目録の全ページに署名と押印をしなければなりませんが、全てを自筆することに比べればその負担はそれほど大きなものではないでしょう。
■遺言の保管制度
これまで被相続人が作成した自筆証書遺言は自宅で保管するか、弁護士や金融機関に預けることしかできませんでした。
特に自宅での保管は、被相続人の死後に遺言書の所在が分からなくなったり、書き換えられたりする恐れがありました。
こうした問題により相続をめぐる争いが起きることを防ぎ、さらに自筆遺言書をより利用しやすくするため今回の法改正では遺言の保管制度が創設されました。
生前に書く自筆証書遺言を公的機関である全国の法務局で保管できるようになったのです。
法務局に預ければ相続人に遺言があるかを調べやすくなり、遺言をめぐるトラブルを避けることにつながります。
家庭裁判所で相続人が立ち会って内容を確認する「検認」も不要になりました。
これまでは自筆証書遺言が見つかった場合、検認手続きをしないと遺言書の内容を確認することができませんでしたが、新たな法改正でこの厄介なハードルは大きく軽減されました。
ここまで、いくつかある改正点のうちの主な二つを解説してきましたが、注意しなければならないのは施行日についてです。
パソコンによる財産目録の作成は、平成31年1月13日の施行日以降の日付でなければ改正前の民法が適用され無効とされてしまいます。
一方、法務局による遺言書の保管制度は、公布日(平成30年7月13日)から2年以内に施行予定です。
それまでは法務局への保管申請ができないうえ、施行までまだ期間があるため詳細が明らかではない点もあり、注意が必要です。
■新・自筆遺言でトラブルを防ぐ
2019年から随時施行されていく新相続法。
作成要件の緩和や、法務局による保管制度が新たに創設されたことで、これまでより簡単・確実に遺言書が残せるようになりました。
相続の形が大きく変わっていくことになりますが、まだ遺言書を作っていないという人は、これを機会に作成を検討してみてはどうでしょうか?
遺言書がなかったばかりに争いに発展するケースは多々ありますが、逆に言えば遺言書さえあれば回避できるトラブルが沢山あるのです。
遺産分割に多少の不満はあっても、故人の意思に反してまで争おうと思う人は少ないはずです。
自分の意思を明確に残し「争族」を防止させるため、今いちど新しい相続法を確認してみてはいかがでしょうか。
リガーズサービスのコラムについて
リガーズサービスのコラムでは、医療や福利厚生、
より良いシニアライフの考察に役立つ情報を幅広いジャンルからピックアップして配信します。
エンディングノートや遺言をつくることだけが終活ではありません。
終活とは成熟した大人がこれからの人生をどのように楽しみ、次の世代に何を託すのかを決める作業です。
何かを決めるということは大変な作業ですが、
それだけにその決断は大切なヒトへのやさしさや愛情になるのではないでしょうか。
リガーズサービスのコラムが、あなたの充実した終活のお役に立てれば幸いです。