第二の人生として起業を選択するシニアが増えています。
少子化や年金受給開始年齢の引き上げなど、人口減少による働き手の不足や国の厳しい財政などが要因ですが、他にも引退後の有り余る時間を有意義に使いたいと考え起業するシニアもいます。
個人の収入、また国内の労働力確保という点や、セカンドライフの生きがいとして老後の働き方について考えていかなければならない時代になっている今、第二の人生を起業家として挑むシニアが増えているのです。
そこで今回は「人生100年時代」の中で節目を迎えた人たちが、どのようにシニア起業家として活躍しているのかを紹介していきたいと思います。
⬜︎ 現役時代に積んだビジネス経験を生かす
「過去の経験すべてが生きている」と語るのは、金型商社ケイパブル(京都市)の河原洋逸社長(65)。
半導体業界と金型メーカーの間で営業や設計を代行しています。
8年前まで半導体製造装置大手TOWA社長だった河原氏ですが、技術力のある町工場が海外製品との価格競争に苦しむ姿を目の当たりにし、2012年に起業。
半導体製造に使う「超精密」金型をはじめ、町工場の技と大企業をつなぐ懸け橋として奮闘しています。
前職を含め、20年以上半導体に関わって築いた信頼が実を結び、今では自動車や電機大手からも依頼が舞い込んでおり、河原氏も「75歳までは走り続ける」と意気軒高です。
青山プロジェクトYKA(東京・中央)を設立したのは、サンリオ株式会社で7年間勤務したのち、花王で25年間理美容業務品の商品開発などに携わった青柳恵美子氏(64)。
定年退職後に花王から社員向け講座を実施してほしいと依頼が舞い込んだのをきっかけに、「育ててもらった会社の役に立つなら」と、まず美容関連で起業しました。
花王や電通との取引実績を経て、現在は窯元と組んで有田焼を使った商品を開発するなど、地域活性化につながる商品開発や美容関連のコンサルティングを行っています。
人脈を生かし、美容のトップ人材とのコラボレーションや商品開発、トレンドを踏まえた社内セミナーを実施するなど、精力的に活動しています。
このように、第二の人生をシニア起業家として第一線で活躍する人が増えています。
日本のシニア起業家は推定63万人、シニア人口(55〜64歳)に占める割合は4%です。
起業家の年齢を見ても60歳を過ぎてから起業するシニアの割合は全体の35%で、この数値は30年前に比べ3倍以上に増えています。
⬜︎ まだまだ少ない、日本のシニア起業家
日本のシニア起業家(55~64歳)は2015年時点で63万人と10年間で約7割も増えました。
しかし国際比率で見ると、実はあまり高い水準ではありません。
世界の経営学者が実施する「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター調査」(11~15年)によると、先進国(26カ国)シニア世代の平均起業率は4.6%ですが、日本は4.0%で18位に留まっています。
しかし、起業率は先進国平均より低いですが10年前からの上昇幅は2ポイントと、1.1ポイントだった先進国平均より高いのです。
これには、少子化でシニアの労働力に期待が高まっていることや、年金の受給開始年齢の引き上げに伴う将来の不安が背景にあるようです。
お金以外の理由でも、今後はシニア起業家が増えることが予想されています。
定年を迎えると第一線から外れてしまうことで「生きがい」を失ってしまうのではないかと考えるシニアが増えているからです。
30年前の60歳代といえば、まさに「老後」と呼称されるような世代でしたが、現代の60歳代は若々しくエネルギッシュです。
そんなまだまだ働き盛りなシニアたちが「生きがい」とも呼べた仕事を失ってしまうと、時間が有り余り過ぎて逆に楽しくない、といった状況に陥ることは簡単に予想できます。
企業は再雇用で処遇しますが、制度にミスマッチを感じるシニアの起業は今後もどんどん進んでいくでしょう。
⬜︎ 長いセカンドライフをどう生きるか
2018年にWHOが発表した統計によると、日本は健康寿命が世界2位となっています。
健康寿命がトップクラスということは、現役時代に培ったビジネス経験を引退後のセカンドキャリアで活かせる時間も長いということを意味します。
人生100年時代と言われるいま、仮に60歳で現役引退をした場合、残りの40年をどう生きていくかということは、人生の大きなテーマになってきます。
シニアの起業は自分が今まで培ってきたノウハウや価値観、そして生きがいを実現するための一つの手段です。
長いセカンドライフを楽しむため、そして有効活用するために、今後も社会で活躍するシニア起業家は増えていくでしょう。
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