認知症の患者数が人口の高齢化と比例して増え続けています。
このままのペースで高齢化が進めば、認知症を患う人の数は2025年には
700万人を超えるとの推計値が発表されています。
これは65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症に罹患する計算になります。
現在のところ、「これをすれば絶対認知症にならない」という対策は見つかっていません。
しかし、不健康な生活スタイルを改善し、健康的な生活を送ることで予防が可能になることは
判明しています。
高齢になると発症率が上昇する認知症ですが、若いころから発症を遅らせる努力を
することは認知症予防にとても有効なのです。
そこで今回は認知症予防をうまく生活に取り入れて、いつまでもはつらつとした生活を
送るための認知症予防のポイントを紹介していきたいと思います。
■認知症リスクを上げる生活習慣病
認知症を根治するための有効な治療法は、現在のところ見つかっていません。
しかし認知症発症には生活習慣病が深く関わっていることは分かっています。
2型糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病が認知症のリスクを大幅に
上昇させているのです。
厚生労働省認知症研究班・九州大学大学院医学研究院が福岡県久山町で
半世紀にわたっておこなった疫学調査では、
中年期からの高血圧は脳血管性認知症のリスクとなり、糖尿病は主として
アルツハイマー型認知症のリスクになるという結果が出ました。
アルツハイマー病学会国際会議(AAIC)2017で発表され、認知症を専門とする
24人の専門家によって制作された報告書でも、不健康な生活スタイルが認知症の
発症要因の35%を占めているという研究報告を出しています。
その要因とは、若年期の早期教育の不足、中年期以降の高血圧、肥満、高齢期の難聴、
喫煙、うつ病、社会的な孤立、糖尿病など、世界的に患者数が増えており、
効果的な対策が求められているもので占められています。
しかしこれらは言い換えれば、不健康な生活スタイルを改善することで、
認知症発症のリスクは大幅に軽減されるということです。
今はまだ決定的な治療法が見つからない認知症には、健康的な生活を送り早めに
認知症予防に取り組む努力が何よりも有効な対策であることは間違いないようです。
■認知症予防の3つのキーワード
治療が困難な認知症ですが、生活スタイルを改善することで認知症の多くを予防できる
という知見は、とても大きな希望を与えてくれます。
それでは具体的にどのように認知症予防に取り組めばいいのでしょうか。
キーワードは「運動」「栄養」「交流」です。
1.運動
運動や身体活動は、その種類や強度に応じて、アルツハイマー病の発症リスクを
最大で65%まで軽減するのに役立つと言われています。
運動は認知症発症要因である、「アミロイドβタンパク」を溜まりにくくするのに効果が高く、
特にウォーキングなどの有酸素運動は脳の血流を良くする効果があり、
内臓脂肪を燃やし、血糖値や中性脂肪値を下げ、血圧を下げる効果もある優れものです。
1日30分の運動を週に3回以上行うのが目安になりますが、30分の時間を取るのが
難しい場合には、10分を3回に分けても効果があります。
運動の強度は「楽」から「ややきつい」と感じられる程度が最適です。
そして楽しみながら行うと脳が活性化され、認知症予防の効果がさらに上がることが
期待されます。
また、運動することで睡眠の質も良くなります。
質の良い睡眠はアミロイドβタンパクの排出を活発にし、
認知症予防にとても効果的なので、積極的に日中の運動量を増やしていきましょう。
また運動が難しい人には、楽器の演奏や、編み物などの手芸、料理などの手作業など、
体の一部を使う活動も脳を活性化できる有効な手段になります。
2.栄養
不規則な食事や大食い、大酒などもやめ、できるだけ彩りの良い食事を摂取しましょう。
高タンパクな肉や魚、新鮮な野菜や果物を積極的に摂る食事は、
2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドロームを予防・改善し、
認知症予防にとても効果的です。
具体的には、コレステロールを減少させるDHA(ドコサヘキサエン酸)や
EPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む魚、特にサバ・イワシ・サンマなどの青魚を摂ると、
アルツハイマー病の発症リスクが低下するという報告があります。
また、緑黄色野菜に含まれるビタミンやポリフェノールなどの抗酸化作用のある
栄養素には、活性酸素によってうける神経細胞のダメージを減らす作用があり、
野菜・果物・ベリー類・海藻類・ナッツ類が有効とされています。
これらに含まれる栄養素、実は日本食に多く含まれるので、日本食が認知症予防に効果的
とする研究結果も報告されています。
近年、欧米の食事が生活に馴染んでいますが「1日に1食は必ず和食を入れる」といった
心がけから始めてみてはどうでしょうか。
3.交流
人間は社会的動物といわれ、他人との交流がなによりも脳を刺激し生活の豊かさを
もたらします。
大勢の人と一緒に活動したり、楽しくコミュニケーションをとることは、脳へ刺激を与えて
脳の神経細胞を活性化させることにつながります。
とくに「おしゃべり」は認知症予防にとても効果的です。
おしゃべりを楽しむ時、脳では相手の話を記憶として保持しながら適切な言葉内容を
選ぶという、思いの外高度な処理を行っています。
さらに話す時に抑揚をつけて感情を込めたり、逆に相手の話し方から
感情を読み取ったりします。
口や舌を動かすためには前頭葉の運動野が働きますし、記憶に関わる海馬や、
いろいろ考えたりする過程で前頭前野も働きます。
おしゃべりはまさに脳をフル回転させる作業といえ、認知症予防に有効な脳トレの
ひとつなのです。
また、社会とのつながりが多様であるほど認知症発症のリスクが減少し、
最大で46%低下するという研究を国立長寿医療研究センターなどが発表しています。
家の中で退屈な日々を過ごしていると、家族以外の人とコミュニケーションをとる機会が
減り、脳への刺激も少なくなってしまいます。
老人クラブやボランティア活動などの社会活動に積極的に参加し、
社会の中で役割や生きがいを持つと自然に人と会話や交流をする機会が増えるでしょう。
■充実した毎日が認知症予防につながる
どうでしたか?認知症予防策とは言っても、「そんなに特別なことではない」と
感じられた方が多いのではないでしょうか?
地道に継続することは必要ですが、食生活の改善や運動習慣、趣味の活動や友人との
交流など、生活をより健康的に、充実させるための取り組みといえるものばかりです。
大切なのはこれらの習慣を楽しむことです。
身体に良いものをしっかり食べ、気の合う仲間といっしょに運動や交流をしたり、
ときには地域の活動に参加するなど、毎日を楽しむことで長い間続けられますし、
認知症予防効果も高めてくれます。
認知症予防は、「認知症にならないためにする」という後ろ向きなものではありません。
「健康的で充実した人生を送るための活動のついで」と気軽に捉え、
長く継続して取り組んでいただけたらと思います。
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