前回は初期〜軽度認知症の人を支援する制度「認知症リンクワーカー」や各自治体、市民による支援団体についてご紹介しました。
今回は「若年性認知症」についてお話していきます
■「若年性認知症」について
認知症は一般的には高齢者に多い病気で、65歳未満で発症した場合は「若年性認知症」とされています。
厚生労働省が2009年に公表した調査によると、「若年性認知症」の推定発症年齢は平均51.3歳。性別で見てみると人口10万人当たりの患者数は、男性57.8人、女性36.7人と男性が上回っています。
「若年性認知症」の症状は、高齢者の認知症と同じです。
しかし原因は大きく異なり、若年性で最も多いのは、脳出血や脳梗塞などによる脳血管性認知症が39.8%
高齢者で約7割を占めるアルツハイマー型は25.4%なっています。
このほかに、頭部外傷性後遺症7.7%前頭側頭葉変性症は3.7%アルコール性は3.5%となっています。
また、年齢や原因が異なるため、新たな問題も上がってきています。
早い段階で診断を受けても「若年性認知症」と診断されず、治療の開始が遅れるというケースが増えています。
神奈川県が2011年に行った調査では、「若年性認知症」と推定された人のうち、診断された割合は3割弱にとどまり、受診してもうつ病と診断されたり、確定診断までに時間がかかったり、確定診断後も本人の疾患受容が困難であるなどして受診の継続が難しいことがわかってきています。
患者数は人口の減少に伴い、今後大幅には増えないと見られていますが、発症した場合、有効な治療が確立しておらず進行具合も人によって様々です。
家庭を支える現役世代の発症は、家族の生活に大きな影響を及ぼすため早い段階での診断、支援が求められます。
■様々な影響と広がる支援
「若年性認知症」を発症した場合、現役世代が多いため、本人だけでなく周囲への影響も大きくなります。
考えられる様々な問題の中、重要になってくるのが「就労の問題」です。
厚生労働省は、認知症介護研究・研修大府センターとの協力により、2014年に愛知、大阪、秋田、山形、富山、石川、福井、岐阜、三重、和歌山、岡山、山口、香川、長崎、宮崎において、若年性認知症の調査を実施しました。
その結果、 「若年性認知症」の人で就労経験がある1,411人のうち、定年前に自ら退職したのは996人
解雇されたのは119人と、全体の79%が退職を余儀なくされています。
この問題に対し、政府は全国的に支援体制の拡充を目指しています。
厚生労働省によると、3月末時点で「若年性認知症」に関する施策は42都道府県が実施しており、都が勧める専用相談窓口を設けているのは2016年10月時点で20都道府県に上ります。
富山県では2016年7月に「若年性認知症相談支援センター」を開設するなど、各地で支援の輪が広がってきています。
その他にも、前回お話しました京都府で初の試みとなる「認知症リンクワーカー」など、周囲の認知症に対する理解の輪が広がりつつあり、地域全体で協力し合う体制ができてきています。
そうしたサポートを得るためには自分自身が発症した場合、周囲に知らせる勇気を持つことがとても大事なのです。
■終活でできる予防
前回も取り上げた、終活しながらできる認知症予防として、今回は「体験を思い出す訓練」をご紹介します。
認知症になる前段階では、通常の老化とは異なる認知機能の低下があることがわかっています。
これを予防するには、脳機能を集中的に鍛えることで発症を遅らせることができると期待されています。
「体験を思い出す訓練」は当日の日記ではなく、今日の出来事を2日、3日後に日記に書くという方法です。
リガーズサービスには「うたかたより」というサービスがあります。
「うたかたより」は生前に残したメッセージをお預かりし、家族や友人、お世話になった方々にメッセージを閲覧していただくサービスです。この「うたかたより」の中にダイアリータイプというものがあり、文章や写真で日々の感じた想いを日記のように残すことができます。
このタイプを利用し、体験を思い出しながらご家族や大切な人たちに気持ちを残すことができれば認知症予防プラス今後の安心も手に入れられるのではないでしょうか。
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エンディングノートや遺言をつくることだけが終活ではありません。
終活とは成熟した大人がこれからの人生をどのように楽しみ、次の世代に何を託すのかを決める作業です。
何かを決めるということは大変な作業ですが、
それだけにその決断は大切なヒトへのやさしさや愛情になるのではないでしょうか。
リガーズサービスのコラムが、あなたの充実した終活のお役に立てれば幸いです。