皆さんは「グリーフケア」という言葉をご存知でしょうか?
「グリーフケア」とは、別名「悲観ケア」といい、
死別により、大きな悲観(グリーフ)に襲われている人に対するサポートのことを言います。
在宅介護が広がったことで、自宅で家族をみとるケースも多くなり、
遺族をサポートする介護職員にも、
グリーフケアについての知識が求められています。
ここではグリーフケアの実態と、介護現場とグリーフケアの関係性について見ていきましょう。
グリーフケアの「グリーフ」とは?その症状とグリーフケアの内容
人は配偶者・親・友人・子ども・ペットなど大切な存在と死別すると、
喪失と同時に立ち直ろうという思いから、不安定な精神状態になり、
身体的にも違和感や不調を感じるようになります。
これを「グリーフ(grief)」=大きな悲観と言います。
グリーフの反応は個人差はありますが
・睡眠障害や食欲障害などの「身体的な反応」
・感情の麻痺や自責感などの「精神的な反応」
・ぼんやりしたり、死別をきっかけとした反応性の「うつ」による、ひきこもりなどの「日常生活の行動の変化」
といった、症状が現れます。
しかし、グリーフに対して反応が出る事はごく自然なことなのです。
身体的な反応 | 精神的な反応 | 日常生活の行動の変化 |
・睡眠障害
・食欲障害 ・体力の低下 ・健康感の低下 ・頭痛、肩こり ・めまい ・動悸 ・胃腸不調 ・白髪の急増を感じる ・体重減少 ・免疫機能低下などの 身体の違和感 ・疲労感 …など |
・感情の麻痺
・罪悪感 ・自責感 ・無気力 …など |
・ぼんやりする
・涙が溢れてくる ・死別をきっかけとした 反応性の「うつ」による ひきこもり ・落ち着きがなくなる |
人は死別すると「ショック期」「喪失期」「閉じこもり期」を経て「癒し・再生期」のプロセスを経験します。
このプロセスは遺族が必ず越えなくてはならないものであり、
これを「グリーフワーク」といいます。
グリーフワークには個人差があり、
全ての人が同じ症状、同じ期間で経験する訳ではありません。
グリーフワークを側で支え、立ち直るまでの工程を見守るサポートが、
「グリーフケア」です。
グリーフケアの方法としては、定期的に手紙や電話等で、
死別で悲しむ人の気持ちを肯定し分かち合うといった、
「傾聴」、「葬儀参列」、「家庭訪問」などが挙げられます。
期間としては1年程とされていますが、グリーフワークに個人差があるように、
グリーフケアも期間や内容に個人差があります。
グリーフケアの認知度は?アンケートからわかる介護現場のリアルな声
在宅介護が広まった昨今、
「グリーフケア」は介護職員にもその対応と知識が必要とされています。
しかし、セルフケア・ネットワークが2015年7〜9月、
介護職員584人を対象に行ったグリーフケアの認知度調査の結果によると、
なんと「グリーフケアを知っている」と回答したのはわずか24.3%という結果が出ています。
その一方で「グリーフケアは必要」と感じている介護士は81.7%に及ぶという結果も出ています。
このことから、介護の現場でグリーフケアの必要性を感じられていながらも、
認知度は決して高くないという現状が浮かび上がってきます。
その原因として、医療スタッフと違って介護職員はグリーフケアについて学ぶ機会がないということが挙げられます。
独学や研修でグリーフケアを学んだことがある介護職員はわずか15.8%という結果が出ており、
行うことに対して「遺族の助けになるのか」「何をすればいいのか分からない」という実践への戸惑いがあるようです。
東日本大震災で注目されたグリーフケア。残された人々が未来に進むために・・・
1960年代にアメリカで始まったとされるグリーフケアはイギリスやドイツでは広く浸透しており、
日本でもグリーフケアについて研究している大学があります。
上智大学「グリーフケア研究所」は日本で始めてグリーフケアを扱う研究所として2009年4月に開設され、
2010年に聖トマス大学から移管されました。
一般社団法人「日本グリーフケア協会」はグリーフに陥っている人を助けるアドバイザーの育成に力を入れており、
定期的に「グリーフケアアドバイザー認定講座」を開催しています。
こうした活動により、グリーフケアが徐々に日本に広まりつつあります。
そして東日本大震災で、グリーフケアが注目されました。
日本グリーフケア協会は実際に被災地を訪れ活動をし、
震災支援活動として無料講演会を開催。
被災地の方々に情報的サポートや、
被災地の人々のグリーフケアに当たりました。
こうした活動がメディアにも取り上げられ、注目を浴びていました。
グリーフケアが人々に浸透して行く日も近いかもしれません。
人は生まれ、いずれ死を迎えます。
残された人がこれからの人生をしっかりと歩んで行くための手助けとして、
グリーフケアについてさらに関心を持たれてはいかがでしょうか?
また、残す側の人にもできることがあります。
大切な人が自分のために悲しんで身体を壊してしまうのはとても悲しいことです。
残した人に少しでも早く立ち直ってもらうためにも、
終活を通して大切な人たちへメッセージを残しておくことが大切です。
あなたの傍に大切な人を無くし、
悲しんでいる方がいる場合、
次のことに注意しましょう。
遺族を傷つけるおそれのある言葉
●「元気?」(いい返事を期待)
●「気持ちの整理つきました?」(探りを入れる)
●「あなたがしっかりしないと」(励ます)
●「あなたより大変な人もいるのよ」(比較)
●「気分転換に◯◯したら?」(アドバイス)
グリーフは本人にしか克服することができない現象です。
無責任な言葉は、遺族を傷つけてしまうおそれがあるので気をつけましょう。
先述したように、遺族のためにも「悲しみ過ぎないよう」終活で伝えておくことが大切です。
■一般社団法人「日本グリーフケア研究会」
https://www.grief-care.org/(外部サイト)
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